第3話 【どうやら異世界転生だったらしいです】
あの後、リジィーさんによって散々と世話を焼かれた僕は、屋敷の広い廊下を彼女を連れ去って歩いていく。
常に僕の一歩斜め後ろに控える彼女の立ち振る舞いは、やはりそこいらの12歳のそれではなく、瀟洒である種の芸術を感じる品格があった。
そんな彼女を連れながら、屋敷の大食堂まで黙々と歩いていく。
ーーさて、僕がこの世に生まれて5年間。色々と前世での違いに驚かされる事があった。
この世界、前世でいう《太陽系第3惑星地球》ではなく、また違う惑星であるようだ。
……つまるところ、所謂“異世界”というものらしく、この世界の名称は《フリージア》というらしい。
この《フリージア》における大陸の数は3つ。
……他にも数々の島国があるらしいが、いずれもこの大陸を治める大国の俗国か同盟国であり、あまり国力は持たないらしい。
さて、先に挙げたこの3つの大陸とそれを治める大国、敵対こそしていないものの、そこまで友好的というわけでもないらしい。
各国のパワーバランスが崩れるとどうなるかはわからないとのこと。
その大国というのが、次の3つ。
……一つ。人間至上主義であり、皇帝によって統治される機械と工業が盛んである国。《マキナ帝国》
……一つ。民主主義派であり、文化交流やら貿易に力を注ぐ国。《メールム連合国》
……一つ。国王を頂点とし、魔導工学や騎士の育成に力を注ぐ国。《アデルナ王国》
特にこの《マキナ帝国》の癖が強いようだ。
他の2国はそれなりに上手く関係を築いているようだが、マキナ帝国は自国が認めないものを一切として受け入れないらしい。
この我儘とも言える主張が通っているのも、帝国自体の国力が高いことに起因する。
その強大な国力は連合国と王国が手を組んで漸く渡り合える程だとか。
……因みに、僕らの住んでいるところはアルデナ王国の東部、その中で一番大きな街である《イーリス》とのこと。
さて、先程の各国の特色にあったように、この世界では"人間以外"の人種が普通に存在するし、"魔法"を利用した《魔導工学》なんてものも存在する。
人間や種族にも細かく分かればかなりの種があるようだが、大きく分けて3つ。
僕や両親のような、ごく一般的な人間、もしくは人間と近しい形や習性を持つ《人精種》
所謂獣人や龍人、はたまた妖精の様なファンタジー世界の王道ともいえる存在。人型に近しい、または人型に変化するけれど、習性やその存在が人ならざるものである《亜人種》
そして、神霊や悪魔、またまた天使などの最早人とはかけ離れ、霊的なものや魔性を主とする存在《天魔種》
他の存在に関しては種としての数が少なく、大きなカテゴライズはされていない。
実際に神や魔神なんかもいるらしいが、まず人前に出る事がなく、そして数自体もそうないとのこと。
……いや、そんな存在がポンポンといても困るけれど。
ここまででも充分にファンタジー世界であるが、驚くべきは魔法の存在。
実はこの魔法というもの、本やゲームの様に"限られた者しか扱えない"ということはなく、練習さえすれば大抵のものは習得可能だとか。
ただし、その魔法にもやはり難解なものがあり、難解になればなるほど習得難易度も跳ね上がる。
種族的に習得の可・不可もあるらしいが、人族は大体はオールラウンドに習得できるようだ。
……個人によって、得手・不得手はやはりあるようだけれど。
ただし、この習得に必要な教材、まぁゲーム的に言えば《魔法のスクロール》的な教材だが、ムチャクチャ高いらしい。
そりゃあ、使い方を間違えれば殺人道具に成り得る"魔法"という存在を、安価で売り捌く訳にもいくわけがない。
その辺はやはり国が上手いこと管理しているのだろう。
そういった背景があるので、いくら誰もが練習すれば会得できるといっても、貴族階級などの裕福層が習得者の大半を占めるし、貧困層になれば生活の補助に使える程度の"生活魔法"を覚えているのがやっと、といったのが実状だったりする。
……幸運なことに、この家には教材が沢山あるとのこと。
是が非でも魔法を習得して、僕自身の強化に向けなければ。
ーーそんな思考を巡らせているうちに、目的地である大食堂の前まで来ていた。