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男は燃えた
意識が灼けつくようだ。
身体中ただの一片も静かな場所はない。
吐く息は白く。
瞳は真っ赤に充血して。
血の涙を流すのは、如何故か。
脳内に声が響いてる。
思考が煮立つ熱の言葉。
――覚醒しろ、覚醒しろ、覚醒しろ。
一定のリズムで加える声の圧は、俺を真上から潰そうとした。
熱は言う。
超えなければ死ぬぞ。
熱は言う。
抗わなければ死ぬぞ。
熱は言う。
受け入れなければ死ぬぞ。
そうなりたくなければ――覚醒しろと。
「クソが……! 殺してやるッ……!」
零れ落ちた恨み節は稚拙だった。
しかし言葉の上等さを問う余力はない。
ただ全力で、俺は叫んだ――。