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悪魔に、復讐の言葉を捧げる。  作者: 天崎 栞
第7章・数々の謎、壊れ動き始めた歯車
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第85話・悪魔に飲み込まれた、犠牲者



“あの子”と、“私”は何もかも違う。

_____だから、こんな悲劇を招いたの。



理香は、悪魔の洋館を見、心で悟り嘲笑いを浮かべた。


「…………芳久、一つお願いがあるの」

『………なに?』

「森本佳代子について、“プランシャホテルでの当時”を

知っている人を調べてくれる?当時の状況も知りたいの」

『分かった。当たってみるよ」


森本佳代子の素性と関係は

知れたとは言え、知れたのは“繭子の関係性”と“彼女の心情”のみ。

周りから見た“客観的な森本佳代子”は、理香はまだ知らない。


昔の職員の情報を見れるのは、芳久しかいない。

自分には成し得ない、手の届かないものは、

協力者であるの青年に頼むしかない。





疎ましくさえ思っていた

プランシャホテル理事長の息子の立場というが、

こんな所で役立つなんて思っても見なかった。

森本佳代子が、椎野理香の叔母という事実には驚いたが

時間が経てば経つほどに納得する。



彼女は叔母に似た。

容姿も性格も。



ただ。

理香が、復讐心に飲み込まれた以外は。



漸く(ようやく)事実が分かった。

踏みにじられた思いも、無念も。

森本佳代子の日記を読み終わってから理香の悪魔への憎悪と復讐心という細胞は、増殖して行った。



「……………………」


優しい微笑みを浮かべながら、バイオリンを弾く女性。

日記に挟まれていた、少し色褪せた写真には森本佳代子が写っていた。

姉妹と云えども、繭子いもうととはちっとも似ていない。

代わりに__姪に当たる自分自身とは、細部までそっくりだ。



森本佳代子。

森本家の長女で、音楽の才能を有していた人物。

彼女自身も人一倍、音楽を愛しバイオリンニストとしての目標を追い続けていた。

けれど。




“今日、主宰から言われた。君は辞めたんじゃないかって。

知らない内に母さんが勝手に劇団に辞職届を出して

コンクール辞退の連絡をしていた。


__私は、夢を諦めるしかなさそうだ。

もうすぐに目標が手が届くのに、私はそれを手に入れる事は駄目らしい”



森本佳代子の日記に書かれていた言葉。

バイオリンニストの夢を諦めざる終えなかった。

プランシャホテルのコンシェルジュとして働く傍ら、

彼女は小さな演奏劇団に所属していたらしい。


その才能は認められ、彼女自身も

期待に答えるかの如く才能が更に開花されていく。

だがあと一歩、バイオリンニストの夢に届く所で、

彼女は自分自身の意見も聞いて貰えず、夢を諦めさせられた。


自分自身が一筋も望んでいない、ある“身勝手な事情で”。





誰かがいた。

ロングヘアに質素で飾り気のない水色ワンピースを着た、

透明感のある綺麗で端正な顔立ちをしている清楚な女性。

端から見れば儚げな美人に映る。


(……………………)


彼女はただ呆然と立ち尽くし、壁を見詰めるだけだ。

そしてやがて、彼女の目から静かに一筋の涙が伝う。

その泣き顔すらも綺麗で、息を飲んでしまう。


けれど彼女は知らない。自分自身には見覚えがない。


けれど

そんな茫然自失としている彼女に、

影から見ていた繭子は心の中にで嘲笑った。



(___ふふ。良い気味よ。絶望して落ちぶれればいいわ)



嫌い。

大嫌い。

あんたなんか、壊れてしまえばいい。




「……………」



目が覚めた。

今、見た光景はどうやら夢だったらしい。

自分自身の知らない誰か。それは誰かは分からない。

けれど彼女を見ている間、そんなに時は経っていないのに

繭子は異常な程の憎しみを夢から覚めても感じ覚えていた。


しかし、

自我が目覚め刹那に感じるのは、深い絶望感。

現実では全てが壊れた。自分自身が執着して積み上げてきたものが全てが全て失っている。


(……………どうすればいいの)


霞む視界。

どうすればいいのか分からない。

弱り切った精神では何も行動等、出来やしない。

だから繭子の精神がだいぶ弱っている今、椎野理香にすがるしかないのだ。



___JYUERU MORIMOTO、営業再開するも

当の本人である女社長、森本繭子は姿を現さず。



久々に見たニュースには、

JYUERU MORIMOTO、森本繭子が取り上げられている。

JYUERU MORIMOTOは営業を再開した。


だが、会社自体は低迷の一途を辿っている。



(………挫折を感じた事もなく、全てを自分自身の思い通りに

生きてきた貴女には、今は屈辱と絶望感しかないわね)



全部、自分自身が奪った。

彼女の地位も名声も。自信に満ちた自尊心等の感情達も。

今、彼女にあるのは絶望だけらしい。



けれど。

森本繭子が執着してきたのは、偽りの積み木で建てた城。

それは独り善がりの偽物に過ぎない。


(………………許さない)


理香は、拳を握る。



全てを奪って、悪魔を弱らせたが

欲望の塊とも言えるあの女が、このままずっと

大人しくしてくれれば良いのだけれども、それも確証が出来ない。

きっと時間が経てば、悪魔は忘れた様に動き出すだろう。


ただ。

悪魔が弱っている今の内に悪魔が隠し、

闇に葬られた真相を探るしかない。


理香は、

佳代子が遺した遺品__日記を開くと彼女の心情と事を辿った。



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