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悪魔に、復讐の言葉を捧げる。  作者: 天崎 栞
第6章・壊れ始める糧とそれぞれの思い
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第76話・天使に追い詰められていく悪魔





繭子は一人、家のリビングで震えていた。

例え、震えを止めようとしても止まらない。

身を引き締めながらただ小鳥の様に(うずくま)る。

恐怖心と絶望感に押し潰されそうになりながら、誰も居ない空間で一人、

ひたすらに侵食されていく負の感情にただ心が凍えていた。


JYUERU MORIMOTOの謝罪会見は有耶無耶(うやむや)かつ、何処か曖昧で

プランシャホテルを敵に回し自分自身を保護したた様な発言をした為に、世間では同情よりも批判の声が多く上がっていた。

主に話に浮かび上がったのは、“森本繭子の誠意がない、言い訳でけ”の会見だと。


それに追い討ちをかけたのは

プランシャホテルの理事長・高城英俊が送った直筆のFAX。


『この件に関しまして、

我が社は非常に残念だと捉えております。

我が社は何も知らないまま今回の報道された事に愕然とし、驚きが隠せません。

信頼を寄せていた森本社長から内密に

この様な行動が行われていた事にただ失望しております。


我が社プランシャホテルと、JYUERU MORIMOTOは

提携経営によりお互いの会社の交流・業績を深めていくのが目標だったにも関わらず森本社長はその概念を忘れられていたのですから。


先日、森本社長直々に、私のところから謝罪の電話が来ました。

私としては本心では残念としか言えませんが

我が社と提携関係を結び、協同ブランドの立ち上げ等行ってきた以上中途半端なまま提携経営を打ち切りにするというのは

無責任だと思っております。これから修復を求めていきたい。


それが、今の私の心境です。


プランシャホテル理事長・高城英俊』


それは、まるで

JYUERU MORIMOTOを、森本繭子を追い詰めるかの様な文章だった

高城英俊が森本繭子へ追い討ちをかけ、遠回しに非難している。

所詮、森本繭子の欲望を埋める為の独り善がりにしか過ぎない。

元々、プランシャホテルの事など考えてはいなかった。



『森本繭子社長は

JYUERU MORIMOTO、自分自身の利益が優先だったのだろう』

『裏切られたプランシャホテルが可哀想だ』

ニュースもネットも熱を上げてその様な声が飛び交っている。


JYUERU MORIMOTOは加害者、プランシャホテルは被害者。

それが世間の認識だ。


繭子は世間から批判を浴び孤立し、誰か元々らも悪者にされて行った。

世間がそう認識する度に、繭子は地獄へと引き摺り込まれていく。

繭子の心は混乱の渦うに巻き込まれて正常な思考能力を喪われている。

ニュースの報道されているテレビを掻き消して、ひたすら頭を抱えた。


(………こんな筈じゃなかったのに)





(良いじゃない。もっと絶望すれば良いのよ、苦しみ(もが)いて。

貴女の気持ちが自力で這い上がれない程に弱ってしまえばいい)


ニュースの報道に、理香は嘲笑う。

高城理事長が出した直筆のFAXの文面も効果絶大だった様だ。

悪魔を貶める為ならば、もう手段は選ばない。今はこの攻撃で追い詰める。

もう後には引けない。この末路(さき)見えないけれどそんなのどうでも良い。



プランシャホテル、誰も居着かない旧食堂。


もう何年も使われていない。

シャンデリアを催した淡いランプが壊れかけて、点滅を繰り返している。

しかし旧食堂の部屋のメンテナンスは行き届いていて、

清掃はきちんとされている。廃墟の様には思えなかった。



主に理香は仕事の合間を縫っては、森本佳代子について調べていた。

重要な手がかりとなっている履歴書に全てが書かれている事は有難かった。

情報提供をしてくれた協力者に感謝しながら、

履歴書に経歴に書かれていた面を様々な未解で見詰めていく。


森本家が、どんな家系か理香は知らない。

繭子によって、幼少期は怯えて暮らしていた為に家柄の事は何も聞けなかった。

隔絶された中で森本家は実母がJYUERU MORIMOTOの女社長という事実以外、普通の家系と思い込んで過ごして来たのだが、

それが足枷となり全てはベールに包まれたままだ。



ただ、年齢がやや離れつつも森本繭子と近い事は気になる。

静観な下町の出で出生から幼少期、彼女は其処に住んでいたらしい。

そして書かれた出身地に理香は自分自身の土地勘がある事に気付いた。

やや都心から離れた地方の出身地である、その場所は少し港の静観な町。


つまりその場所は

理香がウェディングプランナーとして自立する前に

成人前から成人後まで、しばらく住み込みで働いていた孤児院がある町だ。

この町なら自分自身の土地勘がある故にそれを利用して、行けそうだ。


(そうだ、今度の休みにでも行こう)


このまま(くすぶ)って居ても、居られない。

何か森本佳代子に関する手掛かりを掴まければ。

前には進まない。



「その表情(かお)は______現地視察でも行こうとしてるの?」




急に上から降ってきた声。

声に出していた訳でもないのに、自分自身の心情を読まれていて驚く。

まるで相手はエスパーかと思いつつ振り向いた先には、

鋭く人の心情を見抜く洞察力に長けた青年がいた。



「どうして………」

「どうして、っていうなら俺の予想は当たりか」


お疲れ様と置かれたミルクティー。青年は珈琲を持っている。

悟った表情を見せた後で芳久は、対面式に座ると両手で頬杖を着く。



「…………貴方は超能力者なの?」

「いや? 全然。 ただ“そうかもな”って予測しただけ」


芳久の態度は飄々としていて、掴めず読めない。

まるでエスパーかと思う程の察知能力、FBI捜査官並みの洞察力には唖然としてしまう。

これ程の察知能力と洞察力に長けた人間が

ウェディングプランナーとして世間に埋もれているのは惜しいだろう。



「で、確認だけど現地視察に行くの?」

「…………………………」



暫しの沈黙の後、理香は静かに頷く。

そして自分自身がこの町の孤児院で住み込みで働いていた事。

何より森本佳代子自身がこの町の出身者である事。土地勘を生かして実際に足を運んで探せば、何か発見出来るかもしれないという事を芳久に全て話した。


全てを聞いた芳久は、



「良いと思うよ。でも___」



短くそう言った後、

芳久は立ち上がり軽く身を乗り出し理香を凝視する。

まるで何かを見定める様に、何かを探る様にじっと見詰めていた。

間近に見える青年の端正に整った顔立ちと澄んだ目に

見詰められるのが耐えられ無くなって理香は自ら視線を反らすと言った。


「…………何か、付いてる?」

「いやさ。理香がそのまま行ったら驚かれるだろう?」

「え?」


理香は呆然とする。

芳久は内心唸った。そろそろ自覚して欲しい。

自分自身と森本佳代子という人と生き写しの様に似ている事を。



「だから、

この森本佳代子って言う人と理香は生き写しの様に似ている。

もしかしたらこの人を知っている人と遭遇したら驚かれるかも知れないでしょ。

この人と何か関係性があるともまだ分かっていない。

知っている人にもし会って驚かれてしまって何かあったら厄介だよ。


……………それに先日、この町で事件が起こって犯人が捕まっていない。

色々考えてみたら"一人"で行くのは少し無謀だと思うよ」

「…………でも」


芳久の意見はごもっともだ。

反論しようとする理香に、芳久は片手を揃えて上下させる。

彼は表情も気持ちも全て、余裕だ。


分かってる。止めるつもりもない。だが。



「要するに諦める、ってことね」

「______いや」


肩を落とししょんぼりとしている理香に、芳久はすかさず否定を入れた。

理香は呆然としているのだが、飄々とした態度を示している芳久は平然と告げる。


「万が一の為に、俺も付いて行くっていうのは駄目かな?」

「でもこれは私個人の事情よ。それに貴方を巻き込むのは……」

「俺は何の為の協力者だよ。大丈夫。出しゃばりはしない。

約束する。それに理香に何かあって命が終わったら無念だろう?


俺は雇ったボディーガードくらいだと思ってくれればいい。


せめてさ

協力者の役割である、“協力”くらいさせてよ、ね?」


にっこりと笑顔で言われて、何も返せなくなる。

確かに自分自身の容貌は森本佳代子に瓜二つで、

佳代子を知っている人物に会えば驚かれ、ややこしくなるだろう。

彼の正論を素直に聞き受け入れるべきだろうか。



だが、少しこの青年の興味本位にも見えるが本心は伺えない。



「……分かった。じゃあ、お願いしてもいい?」


理香は色々考え、青年の条件を飲み込み、芳久の申受けを受け入れた。


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