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悪魔に、復讐の言葉を捧げる。  作者: 天崎 栞
第6章・壊れ始める糧とそれぞれの思い
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第61話・崩壊へ向かう船




JYUERU MORIMOTOの電話が、朝から鳴り止まない。

それどころか次から次へと電話は殺到して、止む気配は無かった。


社長室にある電話も鳴り止まない中、繭子は無視していた。

彼女は両手で頬杖を着きつつもそのまま頼りなさそうに項垂れる。

その強気な顔色には、暗雲が浮かんでいた。



この会社中の電話が鳴り響いている理由さ、一つの発端からだ。


今週に発売された週刊誌。

そのメインには、JYUERU MORIMOTOの記事が掲載されていた。



『______提携経営により親交を深めていたプランシャホテルを裏切り、

地方の有名ジュエリーブランド・aurora(オーロラ)と提携経営を結んだ会社』と。



内緒の上での、第二の提携経営。

プランシャホテルには何も告げずに契約を結ぶ筈が

誰かのリークにより、その秘密裏の事情が世間へと渡り流されてしまったのだ。

要はプランシャホテルを裏切り、auroraと提携経営を結んだという内容である。

要するに繭子は、繭子の欲望は、”誰かに売り飛ばされた“。



マスコミは

センセーショナルな内容に喰い着き週刊誌だけではなく、ニュースの報道陣の目にも止まる。

会社の周りには報道陣が殺到して今か今かと

女社長が出てくるのを待ち会社には問い合わせのメールや電話等が、殺到している。


(なんでバレてしまったの)


顔を両手で覆いながら、繭子は力なく項垂れたまま、

怒りを込めた拳で机を叩いた。







『ジュエリーブランド・JYUERU MORIMOTOが

提携経営先・プランシャホテルに内緒で第二の提携経営を交わしたとして

問題になっています。これは親交を深めていたプランシャホテルを裏切り

新たに乗り換えようとしているのではないか、とのことです』



嗚呼。

なんて、達成感に満ち溢れている事だろう。

ニュースに映るJYUERU MORIMOTOの映像を見ながら、理香は嘲笑った。



週刊誌記事の編集部へ、

掛け合いの電話をかければ、すぐに喰い着いた。

JYUERU MORIMOTOはプランシャホテルを捨ててauroraに内緒で提携経営を結んだのだと。

JYUERU MORIMOTOがプランシャホテルを裏切ったと言えば、滑稽な、スキャンダラスな話に出来上がる。


ニュースや新聞、デジタルニュースアプリには、

JYUERU MORIMOTOの話で持ち切りだ。


(もっと燃え上がれば良いわ)


(ようや)く、あの憎き悪魔を堕とす機会が来た。

12年間の憎悪を晴らす時がやっと、やっと訪れたのだ。

それは理香が長年、待ち望んでいた瞬間でもあった。


世間は、マスコミは、JYUERU MORIMOTOを問題視して

祭り上げ始めて報道陣の記者らはもっと真実を知ろうと、JYUERU MORIMOTOは会社へ殺到しているらしい。

今頃、向こうの会社の状況は凄い状況になっている事だろう。



___________そして、プランシャホテルも。






プランシャホテル 理事長室。




「これはどういうことだ…………」



ニュースに映る報道に、英俊は目と耳を疑い段落する。

双方の会社の交流も深めつつあり、業績も上がり始めていた筈だ。

なのに、こんな大事な時に限ってJYUERU MORIMOTOは何をしているのか。


すぐにJYUERU MORIMOTO本社、森本繭子へ電話を掛けたが、

何度コールをかけても彼女は出る気配すらもない。

……これは意味通りに裏切られたという事か。


苛立ちを隠せずにいる理事長の男。

そんな男の机の向こうにはいつの間にか、芳久が英俊の前に居た。

芳久も神妙そうな深刻な面持ちをして、実父を見る。

英俊は頭を抱え苦悩しながら、目の前に居る息子に話かける。


「______芳久、分かるだろう。事態は大きくなっている」

「そうでしょうね。数は少ないですが、この会社にも報道陣の記者がいるようです」

「……そうか」


苦悩する英俊に、芳久は冷静に告げる。

頭を抱えて苦悩した末に、歯を喰い縛り意を決してから


「…………私は、マスコミの報道陣の取材に答えるつもりだ。

だが森本社長とも会話しなければならない。しかし電話が繋がらない」

「……これから会社の営業はどうするつもりで?」


眉間に皺を寄せ、

額に指先を当てながらも一旦、目を伏せてから



此方(こちら)は被害者だ。

被害者が何も臆する事はない。営業は何時も通りに続ける」

「…………分かりました」




現実は、崩壊へと動き始めている。

憎き悪魔を絶望へと突き落とせるのは今しか出来ない事だ。

理香は何事もない振りをしながら、悪魔が沈んでいく時を待っていた。

だがこれはまだまだ一つに過ぎない。まだ話す事例はあるのだから。

窮地へと追いやるにはじっくりと時間をかけ、悪魔を焦らしながらやり返してやる。



_______JYUERU MORIMOTO 社長室。



鳴り止まぬ電話に、繭子は苛立ちを募らせた。

どうしてこうなったのだろう。穏便に済ませていた筈なのに。

けれどニュースを見れば自社ビルが映り、新聞にもJYUERU MORIMOTOの記事が載っている。


どうして、こうなってしまったのか。

何故、事は悪い方へ進んでいるのだ?


自分自身の思い通りにならない現実が、受け入れられない。

いつも華やかなJYUERU MORIMOTO、華やかな社長、森本繭子であった筈だ。

JYUERU MORIMOTOに、こんな無様な姿は似合わない。



繭子は追い込まれていく。

どうして、と答えの見えない自問自答を繰り返しながら唸り

我を失った怒りの果てに、その机にあったもの全てを床へと

撒き散らし




「ああああああああああああああ___________っっ!!!!」



社長室に悪魔の絶叫が響き渡った。

暴れ回る。其処らの物を落としていく度に物は壊れていく。

けれど繭子は理性を忘れ切っていた。ただ昂った感情のままに壊す。



どうすれば良い。先が見えない。

そんな中で入ってきたニュースの速報の内容に、目を見開いた。


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