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悪魔に、復讐の言葉を捧げる。  作者: 天崎 栞
第5章・娘から悪魔へ送る白詰草の花
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第49話・ざわめく前日、宿敵との再会




計画のプランを繭子は、見直していた。

椎野理香が独自に考え出したプラン。それはとても良いものだった。


誕生日石をモチーフに、

ネックレスやブレスレットのある箇所にちりばめ嵌める。

誕生日石はそれぞれ12個。自身の誕生日の為に、

大切な人の誕生日の為に付け替えが出来るのだ。


これならば老若男女を問わず、顧客を引き込む事が出来そうだ。

そして何より自分自身の身に何時でも付けていられる。



本人には内緒で試作品として店舗に出したところ、

意外にも好評で完売した。



(_______これは売れる)


(流石、プランシャホテル優秀社員の器は違うわね)


悪魔の微笑み。

椎野理香が生み出したプランならば、業績の復帰は可能ではないか。

そう思ったからこそ、この度 商品化する事にしたのだ。


自分自身がジュエリー界の頂点に立って、一番で居たいのは変わらない。

派遣社員に先を越されるのは腹が立った面もあったものの、

この不景気のどん底にいるこの会社を存続させる為には、駒となる優秀者の実力が必要だ。


そんな理由は選んで居られないというのが今の状況だ。

プライドの高い繭子にとって、屈辱的に思いながらも

椎野理香の技量は認めざるを得なかった。


(プランシャホテルでも、優秀だとは聞いていたけれど

デザインの才能まであるなんて………)


椎野理香は、容姿端麗で本当に非の打ち所のない女性だ。

けれど彼女はそれを鼻にかける事もなく、自分自身の

自慢等は一切しないので彼女の才能に気付かない面も多い。




だが。プラスに考えれば

才能のある椎野理香を使えば自分自身の会社は業績が上がり

プランシャホテルを抜くかも知れない。


所詮は、自分自身の会社を輝かせ頂点に立つ道具。

それを思えば自然と口許に微笑みが浮かび止まらない。


(………椎野理香、使えるわね)





「これは、如何でしょう? 松本様の雰囲気に合われているかと」

「これはこういう印象で評価だったわ……メモメモ」


エールウェディング課では、

理香はがむしゃらに走りながら仕事をこなしていた。

躊躇いを抱え迷っている顧客にアドバイスやその要望のニーズに対応する為に。

そして加えて、そのドレスを着た顧客の感想のメモに書き留める。



今は何も考えたくない。



寧ろ、仕事に追われている方が良い。

自分自身の思考に悩むよりも、顧客のニーズに応えている方が

気が紛れて仕事を生き甲斐にしてきた自分自身に合っていると思う。



そんな合理的な理由で

バタバタとしている理香の理由を、芳久は理解していた。

……………母親の会社で、新プランの責任者に決まった上に、

その企画が始まるのは遂に明日だから。


なるべく、森本繭子_______

毒親の事、その毒会社の事を考えたくないんだろう。



(見るに耐えない。

今のうちに体調を壊したら見も蓋もないだろう)


これはやり過ぎだ。

席に着く間も捨てている同僚に、芳久は痺れを切らし歩み寄って

腕を伸ばし掴むと優しくエスコートし、そのまま彼女専用デスクの椅子に座らせた。


「少しは座って休憩したらどうかな」

「…………そんな暇なんてないわ」

「自分自身で無くしてるだけだろ。何時もより今日は休憩多めなのに」

「……そうだけれど。……落ち着かないのよ、何かしてないと」


自分自身の髪の毛先をいじりながら、理香は言う。

そんな理香の様子に芳久はこそこそと彼女の耳許で、小さく


「それってさ。明日の"あのこと" なんだろう?」


そう耳打ちする。

芳久の言葉に、理香は図星を突かれて何も言えなくなった。

しょんぼりと肩を竦めた後、頰を指先で擦りながら、静かに頷く。


「気持ちも分かるけれど、

あまり体力は使い果しない方が良いよ。

今日で体力を使い果たしたら、もとも子もないだろう?


それにこないだみたいに倒れたら、向こうの会社の人、驚くだろうし…」

「……そうよね。それは分かっているんだけれど………」


身体と心が一致しない。

頭の片隅では分かっているものの、考えたら止まらない。

けれど、まだ自分自身の身体自体は万全ではない。芳久の言う事が最もだ。

理香の心はいつでも落ち着いて動く事がないのに、こんなの初めてだ。



理香は珍しく、自分自身の気持ちに着いて行けなかった。






「はい。

では此処で顔を合わせた、貴女達が新企画プランメンバーです。

誠意を持って働くように。では、発起人で責任者である人を紹介します。

さあ、椎野さん。入って来て頂戴」



廊下で立たされていたものの、そう呼ばれて部屋に入る。

女子の5人体制。自分自身は発起人で責任者であるとされたが気は進まない。

部屋に入ってから一礼し悪魔の社長の隣に立つと、強い香水の香りが鼻に届く。

理香は嫌な気分になってきた。


誰が好んで、悪魔の隣に立ちたいものか。

心の中ではそうは思ったが、表には出さずに作り笑顔を作る。

そんな時、繭子は理香の肩に手を置いた。その瞬間。


(__________触らないで)


そう思った。

昔はそう思わないだろうが、今となっては嫌悪感すら抱く。

悪魔の女は自分自身自ら仕組んだこの企画を喜び、心から笑っていた。

そんな中で理香は、悪魔を、悪魔が考えたこのプランを嘲笑う。


(……見てなさい。今は余裕に笑って居れば良いわ。

いつか、私が貴女をどん底に落として後悔させてあげるから)



「この人が責任者で、リーダーである椎野さんよ。

では、椎野さん。軽く自己紹介してくれないかしら?」



自己紹介を、と言われたので

多少微笑みに作りながら、理香は言う。



「初めまして。椎野理香です。

私はまだまだ未熟な人間ですが精一杯、このプランを考え取り組み

皆さんと頑張って行きたいと思っております。よろしくお願いします」


そう言って一礼する。

その刹那、湧いてくる歓喜の拍手の音。

一礼してから顔を上げてふと、全員を見た時、理香は凍り付いた。



………………何故ならば、

その中の一人。自分自身の知っているの人物が居たからだ。



否。自分自身が森本心菜なら、バレていただろう。

けれど。今の自分は何もかもが変わった、椎野理香だ。相手は知らない筈。

けれど。その自分自身を見た瞬間に、捨てた過去が蘇って

心菜としての情が、出てきてしまったのだ。



(……………先輩?)



もう中学時代の頃から会わなくなった存在。

けれど。理香は覚えている。その相手が、誰なのか。

全てが全て知っている途端に内心、理香の心は青ざめて行き、動けなくなる。


それはかつて、理香____心菜を蔑み虐めていた首謀者。

…………森本心菜の先輩だった、小野千尋だった。


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