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悪魔に、復讐の言葉を捧げる。  作者: 天崎 栞
第11章・復讐者が悟るもの
239/264

第235話・復讐者を纏う紗(ヴェール)

【お詫び】

この投稿分のお話が

『傷付いた鳥籠が壊れるまで』の最新話と更新されてしまい

読者様、読み手の皆様に混乱を招く形となり

お詫び申し上げます。大変申し訳ありません。


以前にも同じミステイクを犯し

ご親切に読者様にご指摘されたというのに、

同じ事を繰り返す形となりごめんなさい。




『母の最期を聞いて、悪いのでしょうか。

娘にはその権利すらない、とお思いで?』



森本佳代子には、隠し子がいた。



富男の背筋に冷気、(やが)て悪寒が(ほとばし)る。

そして目の前の娘を見て、怖くなってしまう。


森本佳代子と鏡に合わせたかの様な生き写しの容貌。

彼女の娘と言うのならば、椎野理香は母親譲りの容姿を持ち合わせている。

森本佳代子と、椎野理香がここまで瓜二つの理由も辻褄が合う。


固まっている

富男を他所(よそ)に、理香は紅茶を含んだ。


(貴女は、森本繭子に(ほう)けて、うっかり話してしまいそう)


まだ時ではない。今、

富男が騒ぎ、繭子の耳に入れば場がまた荒れてしまう。

(ほの)めかし程度に游がせておかなければならないのだ。



_____数日前。



大事な話があると健吾に呼び出され、カフェで驚愕の事実を知った。



「森本繭子と、三条富男は不倫関係にあるみたいだ」



理香はああ、やっぱりか、と健吾の言葉に頷いた。

悪魔の行いに驚きもしない。心が慣れて切ってしまっているから。


何かしら関係がなければJYUERU MORIMOTOの女王の側近、重役程の役職は就く事は出来ない。


一見、JYUERU MORIMOTOとは

関係無さそうに見えたがやはり裏はあったか。

険しく怪しげに見えた健吾は、興信所を用いて探っていた。

予想は的中し結果はクロ。



理香は興信所の報告書を置いて興信所に撮影された写真を見た。

都心のホテル繁華街を歩く二人の後ろ姿。


二人が並んで歩く姿は親しげで

肩を抱き寄せながら歩く姿は、カップルにしか見えない。

これは繭子が事故に遭う前の出来事だとしたら、

富男と繭子はかなり前から付き合っていたのか。


富男には妻と、息子二人、娘一人がいる。

不倫関係が成立するのだが、何の接点もない二人が何処で出会ってしまったのか。


「あれだけ佳代子の事の真相を調べてくれ、と

言っていたのに見事に手のひら返されたな………」


溜め息混じりに健吾は呟き、理香も視線を伏せる。


「白石さん」

「…………?」

「白石さんを裏切り、あの人の側に付いたのなら、

私達も裏切られたも同然でしょう。

私はあの人の側に寝返った人は、哀れな裏切者だと考えています。


だから、裏切られたのなら、こちらも三条を游がせて見ませんか?」


冷静沈着な声音。

しかし刹那に、健吾は理香の物言いと、

その後ろに纏う雰囲気に悪寒が背筋を迸った。


悪魔の灼熱の鍋に足を踏み入れたのなら、灼熱の鍋の中で踊ればいい。

ゆっくりと游がせて焦らし、その内心を吐かせてやろう。


「自由にしても良いですよね?」

「………ああ、復讐は君にやりたい様にやればいい。

だがあの悪人ごときに自分自身の人生を棒に振る事は止めておきなさい。


それをしないなら、僕は静かに見ているよ」


その復讐者を纏う漆黒の(ヴェール)は、憎悪と復讐心か。

それは彼女にしか纏えない(ヴェール)なのだろうと

圧巻された。


(娘は、止められない)


きっと、あの女が消えるまで。

健吾は理香の表情や態度、物言いを見て、そう悟った。





富男は怪訝な面持ちで、理香を見た。

理香の態度は冷静沈着で、加えて余裕綽々の様子の様子。

優雅そうな立ち振る舞いから、その感情が掴めない。


「一つ、お聞きしてもいいですか?」

「なんでしょう?」

「三条さんにとって今、大事なものは、

“森本佳代子の不審死の真相”ですか、それとも“森本繭子社長”ですか?」

「………………………」


理香の問いかけは、穏やかなものだった。

だがこの冷静沈着な声音には言葉には出来ない圧力と

恐怖心を伏せ持ち合わせている。その言葉に富男は、

表情を無くして押し黙っている。


(あの人の側に付いたら、絶対に逃がさない。

そして後悔するでしょう。“森本繭子に関わらなければ良かった”と)


理香は、心の中で嘲笑を浮かべている。


(彼女の目的は、なんだ?)


穏やかに見えて、鋭い槍の様な視線を向けられる。

それは取調室で聴聞を受けている犯人の様な錯覚に落ちてしまいそうだ。

理香は視線は逃さない。それはまるで、小動物を見付けた猛獣の様なものだ。


富男は理香の独特の存在感と威圧的に、沈黙した。

理香は黙り込む富男を見詰めて、見切りを着ける。


「…………お聞き出来ない様ですね。

どちらかを選べないのなら、このままお話しても貴方の聞きたい理由もお答え出来ません。……残念です」


理香は立ち上がると、そのまま富男を置いて、去った。


(……………椎野理香は、森本佳代子の娘?)


まさか、と思いながらも、

考えて見れば、夜空に散りばめられた点と線が繋がり

最終的には辻褄が合ってしまう。

白石健吾は、椎野理香を娘と言い、佳代子の姪だと告げた。

けれども椎野理香が森本佳代子の娘ならば…………。



案の定、相手から、携帯端末に連絡がきた。


「はい」

『…………三条です』


自分自身から縁を切った後ろめたさから、

居心地の悪い声音が端末の向こう側から聞こえてくる。

健吾には心の準備が出来ていたので、そつなく交わす。


「なんでしょう?」

『その………聞きたい事がありまして』


声音も震え、小さい。

遊ばれて捨てられいるのは、慣れている。

だからか、何の感情も湧かず、冷ややかな感情を富男に向けていた。


『…………森本佳代子さんには、実は娘がいる、とお聞きしまして。

寝耳に水だったのですが、その娘が、椎野理香さんと耳にしまして………。


本当なんですか?

貴女は椎野さんを娘だと仰有いましたよね。佳代子さんの姪だと。

でも、佳代子さんの娘という事なら………』


相手は動揺を隠せないまま、言葉もしどろもどろだった。


(不器用で、必死だな)



健吾はそう思った。

無言の沈黙に耐えられず、富男は自分勝手にも身を乗り出す。


『…………椎野理香さん、彼女は、

森本佳代子さんの娘というのは本当なんですか?』



「_______もし、そうだとしても、

貴方には中身までは関係ないでしょう」


怪訝な面持ちで、健吾はそう一蹴した。



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