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悪魔に、復讐の言葉を捧げる。  作者: 天崎 栞
第11章・復讐者が悟るもの
233/264

第229話・悪魔の野望と、殺められた天使と

残酷なシーン有。




苦手な方はご注意の上で、ブラウザバックを推奨致します。





(…………羨ましい、羨ましい………)




この頃の繭子は嫉妬に狂う様になっていた。


異母姉である佳代子の事はあまりよく思っていなかったが、


自分自身が求めている欲望や、憧れが、


佳代子に全て注がれているものだと悟った刹那、






佳代子の元には、自然と人が寄る。


しかし佳代子は、それらを追う事も手を伸ばす事もない。


多くの人から羨望の眼差しを注がれているというのに


佳代子にはそれに見返りを求めなかった。


自分自身の世界に佇んだまま、周りを振り返らず、我が道を突き進んでいる。




静寂で優雅な花。






(佳代子が消えない限り、あたしは、無視されたまま)




そんな、味気のないものは嫌だ。


注目を一心に浴びたい。注目されたい、羨望の眼差しで見詰められたい。


だが生憎、人を惹き付ける魅力や才能を、繭子は持ち合わせていなかった。




自身の身の程を知らず、欲望と嫉妬は一途に膨らんでいる。


もどかしさだけが募っていくばかり。






佳代子が存在する限り、自分自身を陽の目を当たらないのは見えている。


欲望を果たす事の支障になる邪魔者は、佳代子だけ。


欲望は次第に心の余裕と理性を失わせていく。




(どうして、佳代子ばっかり)




母親も、周りの人間も。




(何事もない顔をして……当たり前の様に振る舞って、


腹が立つ)






平和に、優雅に生きている佳代子が腹正しく、


繭子は羨望、憎悪を抱きながら佳代子を見る様になっていた。


何か彼女が痛い目を見ないだろうか。


そうすれば、彼女に向けられる眼差しが、自分自身に向けられるのに。




繭子の心に、決定打になったのは、あの出来事だった。




父親が亡くなり、


その保険金を糧に会社を起こすというもの。


娘は自動的にいつかは次期社長の座が与えられる。


女社長となれば、羨望の眼差しを向けられる、輝きを放てるに違いない。


引く手あまたに人からも求められ、追われる人間になる筈だ。




『……繭子が居るじゃない。




あの子、あんなに乗り気だった。会社は繭子に任せられない?』








『佳代子、森本家には良家だったのよ。


何かを成すには、その代表は優秀な人間でないといけないの。


分かるでしょ。貴女が入れば森本家の名は広まるわ。






貴女は繭子より秀でているの。


貴女に託すしかないのよ。賢い貴女だから解るわよね』




(あたし、は母に捨てられた)




そう思い、絶望の奥底に落とされた。


それは、自分自身が佳代子とは異母姉妹で


父親とは他人として悟ってしまったからか。




自分自身には母親だけしかいない。


だから次期社長に選ばれる様に、佳代子を蹴落とす為に


だから母親に媚を売り好かれる様に、


気に入られる様に努力を積み重ねてきたつもりだった。


けれどもそれらは、全ては無駄だったのだと、




そして悟ってしまった。


”佳代子しか選ばれない”のだと。




そして繭子の中に野望が、膨らんだ。




(輝きたい、羨望の眼差しを浴びたい、注目されたい)




(佳代子は、もういいでしょ?)




佳代子を消さなければ、自分自身が輝きを得る事は出来ない事も。


外れた理性は野心を生み、彼女が悪に染まっていく。






その日から、


父親の書斎、の壁を削る様になっていた。


父親を亡くした恋しさを思う娘を演じて、父親の書斎に籠る様になったのだ。




父親の書斎はキッチンルームの隣にあり、ドアの隣は食器棚がある。


佳代子の反発は知っていたので、彼女の日記を盗み覗いては、彼女が実家から離れようとする思惑を知った。


彼女が実家を出る頃を見計らい、事故に見せかける事は出来ないか。




(憎い憎い、消えればいい____)




彫刻刀の刃に、


佳代子への憎悪を込めながら、毎日壁を削った。


削れた壁は憎悪共に磨り減り穴が空き、何時しか食器棚の側面や土台を削り倒している。






そして事件は、起こった。




友人の家でお泊まり会をするから、と言いながら


不在を装っていたが、実は繭子は家に居た。


父親の書斎。自分自身の身長の高さ程に削り穴を空けた。其処には傷だらけの食器棚の側面。


指紋が着かぬ様に手袋をしながら、重い食器棚を押す。


佳代子への憎悪を込めながら押していると、


土台を失いつつある食器棚は、繭子の憎悪の力に負け


ゆらゆらとメトロノームの様に揺らぐ。




_____そして、不思議そうに、食器棚の前にきた異母姉を見た瞬間に。




憎悪と共に食器棚を押した。


その絶えぬ悪魔の憎悪のパワーに負けた、食器棚は前のめりに倒れる。




がしゃん、派手なけたたましい音が絶えず木霊する。


佳代子の悲鳴は聞こえない。


心配になりちらりと、リビングルームを見た。






粉々に、不規則に割れた食器。


うつ伏せに倒れた女性の細く綺麗な指先。


其処から溢れ出した血だまりはみるみる広がってゆく。




繭子が悲鳴を挙げそうな声を圧し殺した。


そのまま、父親の書斎の窓から逃げる様に、異母姉から逃げた。


あの巨大な食器棚の下敷きになれば、助からない。






夜道を走る中で、繭子は異常な高揚感を抱いていた。


佳代子は居なくなった。邪魔者が居なくなった森本家、


それに執着する母親の眼差しは、自分自身に向けられるだろう。


紅潮した頬と悪魔が嘲笑が、繭子を悪に染めていく。




(全てあたしのものよ____)






繭子は狼の如く、心の中で遠吠えした。





【お詫び】

作者の変換ミステイクにより、

「悪魔に、復讐の言葉を捧げる。」第229話が

「傷付いた鳥籠が壊れるまで」の最新話となっておりました。


混乱された方も多数も

居られた方もいらっしゃるかと思います。

読者様を混乱を生む形となり、大変申し訳ございません。

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