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悪魔に、復讐の言葉を捧げる。  作者: 天崎 栞
第10章・復讐者の秘密、解けない愛憎の糸
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第189話・悪魔を輝かせる踏み台




自分自身の人生を輝かせる為に、必要なのは踏み台だ。

とある誰かは、誰かの存在と人生を犠牲にして、

自分自身だけがスポットライトを浴びた。


眩しいスポットライトと共に、脚光を浴びて

高揚に浸る相手は、満たされた感情しかなくて、

その時にはもう、自分自身を輝かせた“踏み台の存在”は忘れただろう。


けれども、その踏み台となった、

その人の血の涙を流している事は、その輝きを浴びてうある張本人も、周りも、誰も知らない。






私は、貴女が輝く為に用意された踏み台。

貴女だけのスポットライトに、脚光に浴びせる為の使い捨て人形。



________ねぇ、そうでしょう?




まだ母親に愛情を、

振り向いて欲しいという感情を求めていた頃、

悪魔に、仮面があると、そして仮面には裏がある事を知らなかった。


私は知らない間に、

悪魔を輝かせる踏み台にされていたようだ。

そして、私は踏み台になると同時に、憎まれ破棄(すて)てられていた。


嗚呼、なんということ。


”あの人“の仮面を被って生まれてきただけなのに。


私は、どう足掻(あが)いても、貴女の踏み台であり、

使い捨て人形でしかない_______。



やっと解った。

私は貴女に利用された使い棄ての人形で、

貴女だけの踏み台だったのだと。

私は貴女の、ただの使い棄ての踏み台の人形なのだと。





悪魔の目付きが、

ややまた険しくなった事を理香は見逃さなかった。



(…………私が()を開けた事、バレたみたいね)


さあ、貴女は、私を、どうするの?


憎い憎い、異父姉の仮面を被って生まれてきた私を。



バリン、ととてつもない大きな硝子音が車内に響いた。




繭子は博人を睨んだ後に、フロントガラスを殴った。

その刹那、フロントガラスは真ん中を軸にバリバリと

純粋無垢な硝子が、ひび割れて粉々に粉砕になっていく。


(この人は人間なのか?)


見開かれ血走った瞳。めり込んで刻まれた皺の数々。

それは尋常じゃない皺が強欲の表情は、酷く人間離れしている。


優越感に浸り自信に満ちていた博人の表情には、

恐怖心が浮かび、心は完全に引いていた。

怯えていたのは、嘘じゃない。


悪魔の拳はまるで鋭い鈍器の様だ。


繭子は、博人を威圧させると気が済んだのか、

ボンネットから降りると、後頭部座席のドアへ移動し

ドアノブをガチャン、ガチャンとドアを開ける様に試みた。


しかし、ドアは開かない。

博人が、予めドアのロックをかけていたからだ。

それでも繭子はドアノブを離さない。相変わらずガチャガチャと開けようとしている。



(貴女の思惑は、なに?)


婚約者に強制的に連れ去られそうな娘を、助ける様な女ではない。

この悪魔は自分自身の私利私欲の為にしか動かないのだから。


(私はどうなるのかしら?)


自分自身の事なのに、まるで理香は他人事の様に見詰めている。

否、理香の凍り付き壊れた心は他人事の様にしか思えない。



そう片隅で考えていると、

まだ記憶にある聞き慣れた轟音が、鼓膜を揺らす。

理香は悟った。また繭が硝子を割ったのだ。


今度は傍のドアだからか、

さっきよりも酷い轟音に聞こえた。

理香はなるべく死んだふりを貫いて動かない様にしていたのだが。


次の瞬間。

違う轟音が響き、車が片方に揺れ傾いた。

気付くと冷たい冬風がの隙間を通り、頬が撫でて髪が揺れた。

今度は何が起きたのか。


繭子は理香を睨み付けた。

その刹那、理香は悟る。


(…………もうやめましょう)


繭子には自分自身が意識がある事がバレているのだから、

もう演技をする必要はないか、と思い少し顔を上げた。

理香は見開いた。



車のドアは繭子の剛力によって

破壊され、寂しげにコンクリートに佇んでいた。

乱れた髪、血走った瞳、張り詰めた形相や表情は、

まるで七つの大罪に出てくる悪魔のようだ。


前髪のせいでやや視界が隠れてしまったが、

悪魔の形相だけは酷く脳裏に焼き付く。

視線が絡んだ刹那、骨が折れてしまいそうな力で繭子は理香は車から引き摺り出された。


その隠した剛力で、車を壊していたのだろう。

車から引き摺り出され早く立ち上がった理香に、頬に強い衝撃が下る。

その衝撃的は(やが)てじわじわとした痛みになって、

繭子に掴まれている反対の手で、頬を押さえた。


ぎろり、と睨み付ける様は、まるであの頃に戻された様だ。

まるで強欲に呑み込まれた悪魔の形相は、言葉では表せない。


理香はある意味意外だった。

どれだけ異父姉に生き写し娘が憎くとも、心菜であった頃、

理香として再会してからも母親から殴られた事はあまりなかったからだ。


幼少時は暴力を受けていたが、

顔だけは痣が残る事を懸念してか尚更、一度もない。

しかし理香の凍り付いた冷静な思考は、微塵も微動はしない。


(貴女に殴られる覚えはないわ)


内心、そう思った。

負けじとぎろりと、理香も睨む。


(親に向かって逆らうとは何よ______)


佳代子の似ている仮面が、憎しみを増殖させる。

しかし佳代子はこんな恨めしい表情は浮かべない筈だ。

佳代子に生き写しの人間でしかないと思い込んでいたのに、

佳代子が浮かべない表情、自分自身への仕打ちを理香は浮かべている。


心菜は、自分自身だけの操り人形。

娘だからこそ、異父姉に似た存在だからこそ、

自身だけが好き勝手して良いのだと思い込んでいた。



「…………貴女の目的は、なに?」



理香は姿勢を戻すと、冷静に告げた。


「私を婚約者と結婚させること?

けれども私には、それが腑に落ちないの。

佳代子叔母さんに似ている私を憎んで、(けな)してきたのに、娘の幸せを願う?


それは、貴女には出来ない事だと思うわ。

佳代子叔母さんも、私も、憎たらしくて堪らないんでしょう?


なのに憎い私に、婚約者を紹介させたりしたのは、何故。

一体、貴女には何の魂胆があるの?」

「_______煩い!!」


ウルサイ、ウルサイ。

ニクラシイ、ニクラシイ。キキタクナイ。



その冷静沈着な面持ちや姿勢も、佳代子を見ている様だ。

自分自身の癪に障って増殖した憎悪と(にわか)な殺意が芽生えていく。





佳代子を見ている様で、

繭子の怒号が響き、また手を振り上げた。

しかしその腕は、理香に掴まれ阻止する。


「同じ真似は繰り返さないわ。貴女の思い通りには生きやしないから」

「何も出来ない小娘の癖に、親に大口を叩いて!!」


頭に血が昇る。

血走った瞳と表情で、理香の胸ぐらを掴んだ。




(嗚呼、またこの感覚だ)


誰もが蚊帳の外に出される様な、母娘だけの世界観。

その空間には誰も入る事が出来なくて、入ろうとすれば追い出される様な衝動で。


(こんなの、嫌だ)


母と娘だけの箱庭の空間。

その箱庭には母親と娘いが以外、寄せ付けず、

箱庭を見詰めている人は、忘れられてしまう。


その箱庭にいる娘は、

母親に引き込まれてしまえば、この母親が誰も寄せ付けない。

そんな気がした。


このままで良いのか。


そう、彼女を奪われると思うと、博人の心は繭子を拒絶した。




(そんな殻は、破ってやる)


(僕が、変えてやるんだ)



「止めて下さい!!」


この母親と娘の喧嘩は、尋常じゃない。



博人は、理香を庇う様に繭子の前に出た。




「どいて!! 貴方には関係ないわ」




「お義母さん。

もう見ていられません。

お義母さんと居ると心菜さんを取られてしまいそうになります。


お義母さんは

心菜さんと結婚する事を約束させてくれましたよね。

なのに、どうして僕と心菜さんを引き離そうとするんですか。

婿になる僕を蚊帳の外に追いやろうとするんですか!!?」


「元々、貴方なんてわざわざ要らないのよ!!」


その言葉に博人は固まった。固まり動けない。

それは女社長から実の息子の様に可愛がられてきた博人には、

衝撃的な、言葉の刃物(ナイフ)


博人を無視しながら、繭子は微笑しながら告げる。


「幾ら、心菜が好きか知らないけどそんな事はどうでもいいの!!

元々から娘を、渡す気なんてなかったわよ?


娘に愛情だの恋心だの、

あたしは貴方にそんな事は求めていないの。

あんたは単なる森本家の婿養子。JYUERU MORIMOTOに、あたしに貢献してくれれば良いだけよ!!」


あたしの犬で居たいなら、

飼い主の指を噛む様な真似はせずに

飼い主の言う通りにしていなさい。婚約者として大人しくしていなければ、あんたは、邪魔者でしか無いのよ!!」


繭子の怒号は、酷く脳裏に焼き付いた。



『_____いい加減に目を覚まして。貴方はあの人を操られているだけよ』


冷静沈着な理香の言葉。

繭子の怒号を聞いて、初めて博人は目を醒ます。


(僕も、社長の操り人形?)



今までの時間は、この女の娘に

純粋無垢に恋い焦がれていた時間は何だったのだろう。

ただ一つ確かなのは、


自分自身は単なる森本繭子の都合の良い操り人形でしかなかったのだ。


(どうして今まで気付かなかったのだろう?)


絶句すると共に、絶望の色が博人の心に交ざる。



繭子は歯軋りを一つ。

一人娘だけでも憎らしくて堪らないのに、

この感情を自分自身の計画を、揺さぶる邪魔者なんて要らない。




「…………どいて!!あたしの邪魔しないで頂戴!」


繭子は、博人を突き飛ばした。


その刹那。

突き飛ばされ、軸を失った身体は、

不運にも車体の天井部分に博人の頭が激突し、

そのまま崩れ去る様に、解放された後頭部座席に横たわり、博人は倒れ気を失った。



スローモーションの様に見えた時間。

まるで時が止まったような感覚。



理香は言葉を失った。





(これで邪魔者は消えたわ)


繭子は、けせらせらと嘲笑った。

理香は絶句する中で罪悪感に苛まれる。

しかしそんな感情に浸っている暇もない。




「…………」

「ぼーっとしていないで、あんたは、大人しく来なさい!!」


繭子に腕を掴まれ、別荘へと引き摺られる様に、

悪魔に手を引かれ、そのまま連れ去れた。





物語の都合上、過激な言葉の表現により

ご不快な気持ちにさせてしまった方々、

お詫びを申し上げます。申し訳ございません。

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