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悪魔に、復讐の言葉を捧げる。  作者: 天崎 栞
第10章・復讐者の秘密、解けない愛憎の糸
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第167話・絶えぬ憎しみ

お久しぶりです。

いつも読んで下さる読者様にとって

大変長らくお待たせする形となりました事を

お詫び申し訳上げます。


申し訳ございません。


これからも

不定期更新となってしまいますが

完結に向けて頑張り、更新していきますので

よろしくお願い致します。





ある者は、異父姉に似た娘へ特別な感情を抱いた。

“憎悪”という名の感情を。



ある娘は誓った。母親を憎しみながら生きると。



そして_____。



母親を、地獄という名の奈落へ堕とすと。





耳元にノイズが響く。




夜の帳に包まれた闇夜の部屋。

その部屋に灯された明かりは、パソコンの画面の光りだけ。

静寂と闇が佇むその部屋には、彼女がいた。


その淡い羽の様な端正な美貌に浮かぶのは、無情で、物憂げな表情。

蜂蜜色の瞳に、闇色を佇ませながら

パソコンの前に佇む彼女は、目を伏せた。


その眼差しは、冷水の如く冷ややかなものだ。

それはまるで視線を向けられただけで、凍ってしまいそうな狂喜を潜めている。



(今日もいない、か)



パソコン画面には、

森本邸リビングルームの様子が映されていた。

それは以前、秘密裏に仕込んだ、24時間フル稼働の監視カメラ。


繭子は、いつ何をするか分からない。

目を光らし警戒しなければ、此方が潰されてしまう。



週刊誌に衝撃的なスキャンダルが出て数日。

時に監視の為に、観察の程度に眺めているが、

其処には、家の主、森本繭子の姿は伺えない。


繭子は、精神衰弱により入院したというが

体調不良は事実の様だが、マスコミが群がる森本邸から、

逃げる様に人目に付かぬ病院に雲隠れしたのかも知れない。


(_______もう貴女に居場所はなくなったわね)



家庭も、会社も。

森本邸には熱気に包まれた中、報道陣が居座っている。

数日で飽きては、他の話題に(くら)替えするパターンが

多いけれど今回は話題が話題だけにマスコミは立ち退く気配は無さそうだ。


JYUERU MORIMOTOは、報道を受けて

営業停止は勿論。社員は続々と辞職願を出しているのだとか。


“殺人者のいる会社で勤めたくはない”


JYUERU MORIMOTOに勤務し、辞職願を出した女性は

マスコミの取材でそう答えていた。


(そうよ。早く辞めてしまえばいい。

悪魔の芽は早く摘んで、潰さないと)


野心にまみれた、強欲な女。

自己欲を満たす為ならば、手段は選ばない。

全て虚像で造り上げ、その形に満足しているだけだ。



(_____私は、それを壊して潰すだけ)




理香に手によって、

ドミノ倒しの様に倒れ壊れていく。

森本繭子が造り上げた虚像のお城は、もう何処にもない。



(それでも、貴女はどうするのかしら、ね)



まだ、惨めに

地団駄を踏みながら這い上がろうとするのか。

それとも、ようやく潔く諦めるのか。


其処まで考えた所で、理香は鼻で嘲笑った。



後者はないだろう。

あの悪魔は、何度も懲りずに這い上がろうとする。

自分自身の、欲望の為に。…………己の身の程も知らずに。


もし

これ以上に己の自己欲を満たすというのなら。

生きた心地を失い、危うくなる程に追い詰め、

自由にはさせない。


それは嘗て、自分自身にした過ちの様に。




(良いわ。這い上がりたいなら、這い上がれば良い。

その度に私が、心菜の存在で苦しめて貴女の欲望の種を潰してあげる)



今の理香には、ある武器が二つ。



“心菜”という存在、そして“佳代子の容姿“。



たったこの二つだけで、繭子を脅かす事が出来る。

この二つの武器は、繭子にしか通じない武器だ。


それに______。




(…………………心菜。

貴女は、このワードを無視出来ない筈よ)








_______総合病院、VIPルームの個室。




カーテンは締め切られ、

光りとは完全に遮断されている。

その部屋のベッドの上に座る、悪魔は歯軋りしながら

鬼の形相でタブレット端末を握り締めていた。





「……あんたは、どこまで、あたしを邪魔するつもりなの………!!」



眉間には縦皺、口元には法令線。

その表情に浮かぶのは凄まじい悪魔の形相。

腹の底から沸き上がるのは、無限の憎悪と怒り。

タブレット端末を握り締めるその手は、わなわなと震えている。


今回はセンセーショナルに、

マスコミの熱は冷めずに炎上し続けている。

暫くは、ほとぼりが冷める気配は少しも無さそうだ。


まさか

虐待が世間に露になってしまうとは思いもよらず。

これはずっと内に秘められ消えていくものだと思い込んでいた。


今や森本繭子は、

華やかなジュエリー界の女王ではなく

娘を虐待し、殺した殺人者扱い。


娘を殺めた人間に、手を差し伸べる人間は一人もいない。



それでも、小娘の仕打ちにも負けず、

何度も何度も、マスコミにも負けず這い上がって

建て直してきたのに。



自分自身のお城に置いて置けば危ないと、会社から追放すれば良い。

これで終わったのだと安堵を覚えた矢先だった。

会社から追放しても椎野理香は平然と邪魔しては、

その健気な自分自身の芽を、理香は壊していく。


(…………腹立たしい)





こんな小娘ごときに、

自分自身の計画が潰されていくなんて。

繭子の気高いプライドが、許す筈も無かった。

自分自身のお城や計画を邪魔して壊す等、許せる筈もない。


(こんな真似して、どうしてくれるのよ______!)


絶望という闇の中で、吠えながらも足掻く。

絶望的な中でも、心に居座る野望、野心は耐えていなかった。

かと言ってこの屈辱に耐え我慢するメンタルも繭子は持ち合わせていない。


「あああああああああ_____!!」



もう虐待の事が世間に晒されてしまった以上

JYUERU MORIMOTOも自分自身の再復帰は、望めないだろう。

もう華やかなあの女社長には戻れはしない。


そう思うだけで心が耐えられない。



(なんて事をしてくれたのよ…………!!)


涼しく大人しい顔をして、人を屈辱に晒す。

あの憎い顔が脳裏に浮かぶだけで、理性が壊れていく。

佳代子も、理香も同じだ。何故、こんなにも自分を苦しめるのだ?


そんな闇の中で足掻き

頭を抱えて呻いていた繭子の脳裏に、一筋の闇の光り。

絶望の中で、繭子に“ある野望”が浮かんだ。




(……………理香を、野放しにしたら不味いわ)



このまま椎野理香を生かしておけば

自分自身のもの、華やかなジュエリー界の女王として

名誉や名声、それらが躊躇もなく全てが壊されてしまう。

ならば、どうすれば良いのか。


憎悪という名の怒りに震える繭子の脳裏に、

ある考えが浮かんだ。



(理香を消せば?)


不意に脳裏に浮かんだ言葉。



椎野理香を完全に抹殺すれば?

だとしたら、もう邪魔されなくて済むだろう。

どちらにせよ、野放しにしてしまえば、彼女は静かにしていない。


其処らの躾のなっていない野犬と変わらない。



(……………そうよ。野犬は消してしまえばいいのよ)


完全に、息の根を。

繭子にとって、それは簡単なこと。

自分の邪魔する者は抹殺してしまえば良いのだ。………佳代子(あね)の様に。


そうすれば、自分自身の人生計画は上手く行くのだから。



理香を、完全に消す。


もう残された選択は、それしかない。

理香が存在する限り、自分自身の人生計画は上手くいかない。



全てを失いながらも、欲望に駈られた悪魔は

外界と隔離された個室で、そんな事を考えていた。



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