表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔に、復讐の言葉を捧げる。  作者: 天崎 栞
第9章・悪魔が仕組んだもの、天使の秘密
164/264

第162話・青年の歪んだ思惑と執着



繭子が病院に運ばれていた事。

あれは、一体何だったのだろう。

一種のパフォーマンスだろうか。


そう思っていたが、

あの目にした光景は嘘だと言い聞かせたかった。


だが。


“椎野さん、週刊◯◯の記事を見てほしい”


白石健吾から、突然訪れた連絡。

何気無く書店に寄り、その週刊誌を手に取ろうとした時、

理香は目を見開いた。



【スクープ!!

あの世間を騒然とさせた、ジュエリー界の女王が

実は入院していた。

若い青年に運ばれ、病院の中へ】


見出しの文字にはそう書かれてあった。

素早く書店での会計を済ませ、週刊誌とネット版の記事にも目を通す。


証拠写真は、あの日、自分自身が見たものばかりだった。

写真にはワインレッドのオープンカーから

博人が繭子を抱き抱えて病院へと入る姿がキャッチされている。


世間を騒然とさせた嵐の女は、

過度のストレスから体調不良となり、総合病院に入院しているらしい。

病院に運ばれている瞬間をキャッチされ、内部の入院患者の情報も漏れていた。


抱き抱えられている隙間からは

般若の様な森本繭の面持ちが、伺える。

『ジュエリー界の女王』と呼ばれた気品も名誉もない。


不様な女。

繭子の姿を見て、理香は自然と嘲笑う。


(品のない姿を、自ら世間に晒したのね。貴女は……)



しかし。

週刊誌に熱心に書かれていたのは、

森本繭子を抱き抱え、病院に運んだ青年の事だった。


“ジュエリー界の女王を、介抱した青年は何者なのか”


世間ではまだ名も存在も知られていない、婚約者の青年。

彼は一体、誰なのか。それが、持ちきりになっていた。




理香は携帯端末の機能を

電話に置き換えると電話をかける。


『はい』

「………白石さん。記事を読みました」


電話の向こうから聞こえた声に、健吾は目を伏せる。

椎野理香の森本繭子に対する行動は素早い。


『読みましたか』

「はい。これは白石が書いた記事ではないのですよね?」

『はい、そんな事は決してありません。相手は週刊◯◯です』

「…………じゃあ、一体、誰が……」


健吾は、理香のリーク情報を元に共謀し

森本繭子を貶める記事しか一切書いていない。

それに健吾は別の会社の記者だ。有名な週刊誌に現れる筈も、文を綴る事もない。



『僕らの知らない誰かだと思います。

森本繭子の現状を知っている誰がが、リークしたのでしょう。

椎野さん心当たりはありませんか?』

「………いえ。何処にも………」


と答えたところで、息が詰まった。

理香の脳裏に、ある人物が浮かび上がった。

自分自身も親しくしていた方だろうが、自分自身も繭子の傍に居て、親しくしていた人間。


(………まさか、尾嶋、博人……?)



『世間にとっては、初耳の筈だ』


「……………」



理香は、言葉を失った。



海外研修から帰国した際、義母となる筈の女性は

弱りに弱り切っていた。それは本人かと疑う程に。

あの完璧な姿の森本繭子ではなく、老婆の様に

衰え窶れ切り、何処か狂乱しそうな女。




(心菜は、何をしているのだろう?)


世間の騒動の渦に巻き込まれ

自分自身の母親がこんなにも窶れ切っているというのに。

精神状態も危うく、精神科に通い薬を飲んでいるというのに。

助けにも戻らず、行方不明のままだ。


(母親を放って置いて正気なのか)


家族愛に満ち、家族と支え合いながら生きてきた博人にとっては

家族を、()してや親を放置したままの心菜が理解出来ない。

だからこそ、博人は怒りを覚えていた。



だかしかし、

母親がこんな状態になっても心菜は戻る気配はない。

だから。博人は奥の手に出た。


『森本社長は、精神的に追い込まれ

また娘の行方不明を心配していて精神に参っているようです』


繭子にも告げず、秘密裏に雑誌記者にリークした。

森本繭子の精神状態は衰弱している事、何月何日、何時頃に

病院に運び入院する、と。

其処をスクープして欲しい。


実際に疲れ弱りに弱り切った母親の姿を見れば、

流石に心菜も自責の念に駆られ心配して帰ってくるだろう。

其処を献身的に母親の傍に居た自分自身の存在に、惚れるだろうとすら思い込み、博人は自惚れていた。


週刊誌に取り上げた記事は、ばっちりだ。

これで心菜は帰ってくるとばかり考えていた。



誰も知らない

MVP御用達の個室で、森本繭子は入院している。

窓からの鮮やかな夜景を見詰めながら、博人はベッドの上で眠る繭子に語りかける。



「大丈夫ですよ。社長。

これで、心菜さんは、帰ってくる。……確実にね」




そう呟きながら、微笑を浮かべた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ