ep18
ようやく第一章が動き出します。(動き出すとは言っていない)
活動報告にも書きましたが、執筆ができる状態にまで落ち着いたのでまた書いていきたいと思います。
早く隔日更新にまで至れるといいのですが、期待せずに待っていてください。
一週間が過ぎて、今私はリベンジを決行するために草原エリアに来ている。この前はラビットに辛酸を舐めさせられたけど、今の私は昔の私に非ず!
今の私のステータスはこんな感じ【弓:19】【闇属性魔法:16】【観察:14】【細工:13】【料理:9】【調合:12】【視覚拡張:18】【魔力:16】【魔力制御:12】【集中:7】となっている。こんなにアビリティのレベルが上がってしまったらラビットなんて余裕で倒せてしまうだろう。それでもリベンジをして、ようやく私は次のステップに上がれるのだ。
「ふふふ…ミーつけた!」
案外簡単にリベンジの相手は見つかった。さすがに同個体とかいうことはないだろうけど、強さは同じくらいのはず。
「よし。落ち着いてー」
しっかりと深呼吸をして心を研ぎ澄ませていく。
「【集中】」
この一週間、幾度となく見てきたこのアビリティのエフェクト、黄色い光が私を包む。
矢を一つだけ弓に番えて平和そうに草を食んでいるラビットに狙いを定める。距離にして約10メートル程。今の私のアビリティレベルならこの距離は外さない。
使うのはもちろん新しく覚えた威力重視のスキル。
「【貫通矢】」
少し赤い光が弓を伝って矢を包み込む。呼吸していた息を止めて、
「いけー!」
システムアシストによって補正された矢はしっかりとラビットに向かって進んでいく。さらに【集中】によって強化された矢は易々とラビットを貫いて赤いポリゴンを舞わせる。そのあいだにもぐんぐんとラビットのHPバーは減っていき、ついにゼロになってはじけた。
「やった…。やった!やっっっったーーー!!」
自分のインベントリを確認してみるとそこにはしっかり【ラビットの肉】の文字が。こうして私のリベンジ戦は終わった…けど。
「できてしまうと次の目標に行きたくなっちゃうね」
そして私は今現在ホーンラビットを探して草原をさまよっている。
「ラビットとホーンラビットの違いは攻撃力と素早さと若干体力が多いだけのはずだから、ラビットが行けるならホーンラビットも一矢で倒せるはず」
それに今の私には攻撃力底上げのアビリティもあるし、行けるはず。
そう、私のこれからのISO生活のためにもここは乗り越えていかなきゃいけないハードルなんだ。
歩き回ること10分少々でホーンラビットを見つけた。ラビット同様のんきに草を食んでいる。そんな余裕で居られるのも今のうち。
体感的にはもうスタミナもそれ程残ってない感じがするからチャレンジはこの一回だけだね。
「【集中】」
すうっとエフェクトと同時に目が冴えて自分の集中力が増しているのを感じる。
「【貫通矢】」
ラビットと同様にどうを貫かれたホーンラビットはても、ラビットとは違い、矢が刺さったまま私に突進してきた。
「えっ!?」
ホーンラビットの体力ゲージはいま減っている途中。まだゼロになってない。
「き、距離を取らなきゃ…きゃっ」
焦って後退しようとして足をもつらせて転んでしまう。
「あわわ」
ラビットよりも素早さが高いホーンラビットはすでに目の前まで来ている。残りの体力はあともう少し。体力ゲージの減りは変わらず一定ずつ減っていっている。
「あ…」
もうダメかもしれないと思ったその瞬間、ホーンラビットの体にエフェクトが入って体力ゲージのへりが早まり一気にホーンラビットをポリゴンへと変えた。
「あ…え…?」
誰かが助けてくれたのかと思いきや周りには誰もいない。そこでようやくその原因に思い至った。
「【失血】…」
スキル【貫通矢】の追加効果の状態異常異常付与に助けられて、ホーンラビットとの戦いは私の勝利で幕を閉じた。運で勝ったんじゃないよ!これが【貫通矢】の効果だよ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ごめんね〜ちょっと待たせちゃって」
ホーンラビットと戦っていざ待ち合わせへ、って思ったらまさかのスタミナ切れで走れず、手持ちの料理も底をついていて料理を食べて回復もできずにスタミナが減らない程度に歩いて帰って来たら遅刻してしまった。
「おーハル。珍しいな」
「そーだね〜。いつもはあたし達がハル。待たしちゃうからね」
「遅れてんのはいっつも風だろ」
「そうかもしれない」
「ホントごめんね。途中でスタミナ切れちゃって、歩いて帰って来てたんだよ」
そう言うと2人に絶句されてしまった。
「そ、そんなにハルはスタミナないのか…。森からここまで帰ってこれるだけのスタミナがないってそれほぼバクレベルじゃねーか」
「う、運営に行ってみたほうがいいんじゃない?」
そして再起動した2人はなぜか失礼なことを言い出す。
「ちがうよ!途中でリベンジマッチがあったの!戦闘があったからそこで使い切っちゃったってこと!」
「ああ。なんだそう言うことか。俺はてっきりリアルがあれだから余りにも補正が掛かったのかと思ったわ、マイナス的な意味で」
「あれ?それにしても数回の戦闘でスタミナ切れってそれもそれでスタミナ低すぎない?」
そして何故か不憫な子を見る目で私を見始めた。
「ち、違うから!私が新しく取得した【集中】アビリティだよ!あれは結構使いやすいけど、デメリットも大きくて困るよね」
私が必死に事実を訴えるとまたもや静まる2人あれ?何か間違えた?
「は、ハル。もしかして【集中】取ったのか?」
「取ったよ?まさかこれも?」
そう言うと2人に盛大なため息を吐かれた。
「あのねハル。【集中】アビリティは確かに有用だよ」
「だよね…?」
「でもな、それはアビリティを発動した地点から一歩も動かなければ、って話だ」
「つまり…」
「つまりな、一撃で相手を倒せるようになっていかないと、戦闘中にスタミナ切れで直ぐに死に戻りだぞ」
ガーン。と2人の説明を聞いて絶句。正直私のアビリティの中ではトップクラス級に使えると思ってたアビリティだったのに。
「俺もβの時は取ってたな。あの時は魔法使いって固定砲台なイメージあったし。でも実際はパーティメンバーとか敵の位置見て逐一動かないとダメだから直ぐにお蔵入りだったな」
昔を懐かしがる様に遠くを見ながら語るれーくん。さっきの死に戻りの話は実体験っぽいから説得力が違う。
「で、ても大丈夫だよ!ほらえーっと、まだ誰も【集中】の進化系とか派生系とか見たこと無いし、ハルがこのアビリティの先駆者だよ」
ちょっと落ち込んだ私を直ぐにフォローしてくれるふーちゃん。それは嬉しい。嬉しいけど…
「ありがと。でも風、肩震えてるよ?」
この幼馴染はなんて人でなしなんだ。
「私の弓とは相性抜群だからいいの!」
「正直言って幼馴染としてはこのゲームを楽しんで欲しいからそんなアビリティ早く控えにしろって言いたけど、幼馴染としては自分の好きな様に楽しんでほしいな」
「なにそれ矛盾してるじゃん」
いきなり訳のわからないことを言い始めるレイに冷たい視線を送る風。
まぁそうだよね。意味わからないもん。
「要するに効率的に遊ぶばっかりがゲームの楽しみ方じゃ無いってことだな」
半ば無理やりまとめた様な感じがするけどそんなところにはつっこまない。
「まあ私はあんまり積極的に攻略していくつもりは無いし、これでいいんだよ」
「そうだよね!じゃあ早速今日のクエスト早くやろうよ」
そうだった。今日は2人と何かクエストをして一緒に遊ぼうってことになってたんだっけ。
「なんのクエスト受けるの?」
「あー【幻の料理店を探せ!】だな」
「なにそれ?」
クエスト【幻の料理店を探せ!】は報酬は美味しく無いけど、運が良ければ幻の料理店でとも美味しい料理が食べられるらしい。ぶっちゃけるとただの観光クエストらしい。その幻の料理店の料理をテイクアウトするのがそのクエストらしい。
「もし見つけられなかったら?」
「NPCに『運がなかったんじゃなあ。また気が向いたお願いしようかのう』って言われる」
「何かあるわけじゃ無いんだね」
「そうだよー。あたしも何回か挑戦してるんだけど、一回もたどり着かないんだよね」
「今日は運がいいといいね」
「そうだな。んじゃ、張り切っていくか!」
わたしの冒険はまだまだ始まったばかりだ!
次回は五月の第二土曜日朝六時更新予定です。
誤字や脱字、この登場人物でこんなお話が読みたい等!の希望やご指摘があれば乾燥欄にてお願いします。