ep12
きんモザ、のんのん、ごちうさが二期きました。
ゆゆ式の二期は何時やぁ!!
のんびり進行にお付き合いいただきありがとうございます。
来年4月までは月一更新を維持できそうですのでのんびりお待ちくだざい。
現在は18話を執筆中です
「ん?どうした?」
「い、いえ。どんなのを作ろうかなぁと話してたんですよ」
「お、そうかい。それは楽しみだな」
来たばかりで鉄さんは全然状況を把握していないみたいだった。鉄さんには悪いけど、それならここは誤魔化しておこうと思った。
鉄さんは初めて会った時と同じように顔を隠すフードをすっぽりと被っていた。
「とりあえず移動しましょう?」
そういうことになった。
そこから歩いて10分くらいのところに目的地の宿屋があった。看板にも大きく『宿』って書かれている。
目の前の宿屋は一階が酒場兼食事処、二階から上が宿泊施設らしい。因みに三階建て。今回はルーさんが予約していたので、ルーさんが受付のおばちゃんに話すといい笑顔で鍵を渡してくれた。部屋は三階の角部屋らしい。高そう。
「う、うわぁ…」
率直な感想が私の口から洩れる。正直引いてしまっているほどだ。
「何もスイートルームを取る必要はなかっただろ」
鉄さんのため息交じりの声がひどく響いた気がする。
ルーさんが私たちを連れてきたのは宿屋のスイートルーム(最上級)と呼ばれるものだった。
楽園には天井から何の鉱石を使われているのかよくわからないけど、きれいな水晶が魔法石の光を受けてキラキラ輝いていて高級感とともに謎の威圧感を放っている。
備え付けられたベッドは触ってみるとその手が何か温かいものに包まれているような感覚を覚える。
カーテンの肌触りも「カーテンにここまでする!?」と思うほど滑らかで透き通るようなものだ。
家具も箪笥や椅子、机などが温かみのある木材で綺麗に加工されその家具からはなぜか堂々とした自信のようなものを感じる。
そしてこの部屋に入ってプロ生産職三人の目が妖しく光ったのを私はみのがさ…見逃したかった。
そしてそれを見て「ああ、なるほど」と勝手にルーさんがこんないい部屋を取った理由を感じた。
「この鉱石…まだ見つかってないな。しかしこの透き通る透明感…。浪漫武器…」
「この生地…どこで見つかるんだろう。これがあればより見栄えのいい防具が…」
「霊木製の机…?霊木なんて木、聞いたことない。しなやかだけど柔らかくない。面白いものが作れそう」
三者三様に何か言ってるみたいだけど私はそれをスルーして備え付けのキッチンに立つ。多分あのままじゃ何をやっても効果がない気がする。それに聞こえた霊木の云々は何かいやの予感もするし他の人が探し当てるのをまとう。
「私は私の仕事…」
インベントリから鉄さんが作ってくれた調理器具たちと食材を出す。
「とりあえずまずはお味噌汁を作って…と生姜焼きの方は下準備終わってるし最後に焼けばいいかな」
そういえば、鉄さんのロールに合わせて思いっきり和風な料理をチョイスしてしまったけど、この高級感溢れる部屋でこの庶民的な料理を食べるのはどうなんだろうと思ってしまった。
手早く料理を仕上げて家具を目の前に未だに唸っている三人の元に持っていく。
「できましたよ~。鉄さんが何が好きで何が嫌いか分かんなかったので、鉄さんのロールを参考に和食にしてみました」
「おお!味噌汁と生姜焼きか!これは美味そうだな。…で米はあるか?」
「ないです」
私の一言に崩れ落ちる鉄さん。こめだぁ…これにはコメがいるんだぁ…と何とも情けない声を発している。…本当に普段の鉄さんはロールをやっているのだろうかと少し疑問に思ってしまった。
「だが味は美味いな。余計に欲しくなる」
鉄さんは最近再起動が早い気がする。
「確かにこの献立はご飯が欲しくなるよね」
「まあ確かにね」
とトトもルーさんも苦笑い気味だ。
「お米はISOにはないんですか?」
「今のところは見つかってないねー。β版でも見つかってなかったし」
「そうなんですか…」
「あるにはあると思うんだけどね」
何か含みのある言い方のルーさんにどうしてですか?と聞くとβ版でもお米が食べたい!という人も案外多かったらしく、運営に色々お願いをしていたそうだ。味噌も実装されてるみたいだし、案外すんなり見つかるかもしれない、と教えてくれた。
「でもハルちゃんよく【料理】なんて取ったよな。空腹度回復なら某手軽にカロリーが摂取できるスティックみたいな携帯食が売られてるし、…美味しくないけど。街にもNPC店の料理屋だって何軒かあるからな、…ちょっと高いけど」
「私はもうちょっとこう、格好良くてファンタジーなセカンドライフを満喫する、みたいなゲームだと思ってましたから。それに攻略するのもやっぱり道中とか楽しみたいじゃないですか。せっかくのファンタジーVRMMOなんですし。一種のロールみたいなものだとは思うんですけど」
何かISO内の食の闇を見たかのような鉄さんに苦笑いする私。
「鉄さんは鍛冶の仕事の時とかよく携帯食食べてるもんね。あれ本当に美味しくないと思うけど」
ルーさんの言葉に、鉄さんは何故そんなにも職に対する運が悪いのだろうかと少し不憫に思ってしまった。
でも、よくよく考えてみるとポーションを飲んだのも検証のためとはいえ自分の領分じゃないところでの話で自分からやったらしいし、携帯食だって鍛冶をし続けるために必要最低限を取ったと言っているし、結構自業自得だということに気づいてしまった。
「まぁ…ご愁傷様です?」
「鉄さんはその変なロールを捨てたらゲームの中でも普通の生活できると思うけどなー」
「うっ…だがせっかくのVRMMOだしちょっとくらいファンタジーの中の人の真似ごとをしても罰は当たらないだろ?」
「鉄さんってそんな仕事を選り好んで、儲かってるんですか?」
どう考えてもそういう人はお金が無くなって経営が成り立たなくなってしまってそうだけど、と私がそう疑問に思っていたのがわかったようで、
「普通、そう思うよね~。でも実は鉄さんもう自分のお店持ってるから。それに注文で武器を作らないだけで、普通に武器は置いてるよ。ちょっと高くても、鉄さんの武器を身に着けてると結構な実力者(お金持ち)だと思われて箔がつくんだよ。鉄さんブランドってとこかな」
笑いながらルーさんはそう説明してくれた。
「ええ!そうだったんですか」
どうやら鉄さんの懐事情は現在60Yしか持っていない私とは大違いだったようだ。
「そうなんだよー。鉄さんが裏路地にお店建てたって聞いてお金を節約したのかな?って思ったけど実際はロールの一種だし設備はかなりいいもの使ってるから寧ろ普通のよりも高いんだってー」
「いや、お前らももう店くらい買える金持ってるだろ」
「私たちは広いお店が欲しいし、私の店とトトの店は一緒だけど生産設備が別ですし、トトの周りのもの揃えてたらお金がねー」
それでもあと二日くらいで目標金額に届きそうだというルーさんにその金額を聞いて目の前が真っ暗になった。
「1.5MY」
1.5M?150万?私の所持金の25万倍?
「お、おめでとうございます」
「ありがとね(-)」
「お、お店ってそんなに掛かるんですね」
「ん?ほんとはそんなに掛からんぞ?この二人は一番でかい規模の店を建てようとしてるからそんなに掛かるんだ。最低で50万位からだな。最低だとあばら屋みたいになるから俺としては80万位からを推奨するが」
「因みに鉄さんのお店は…」
「俺のは…まぁ3M位だな」
ルーさん達の二倍でした。
その後も雑談にに花を咲かせながら、美味しい美味しいと食べてくれ時間はあっという間に過ぎ、精神的ダメージを負った私は今日はここまでとISOからログアウトした。
次回2015/11/14午前6時予定