ゾンビ・サバイバル! 俺は生き延びることができるか?
ショッピングモールはすっかり寂れていた。
入口の自動ドアも機能せず、前に立ってもスライドする気配は皆無。だがガラスが大きく割れて、ドアの役割を果たしていないので、問題なかった。
今更気にする必要もないが、ガラスのギザギザで体を傷つけないよう、ゆっくり跨いで入っていく。
振り返って一応、追跡者を確認。
誰の姿も見えなかった。
追ってくる奴だけでなく、俺の仲間の姿も。
もう俺一人になったのだ。
みんな奴らにやられて!
かつての俺は孤独を好んだが、今では奇妙な仲間意識を感じていた。本能的なレベルで。
仲間の仇討ちとか、奴らに立ち向かうぞという衝動。でも冷静に考えれば、逃げるだけで精一杯だった。
奴らは意外と狡猾。俺の足跡を追って、このモールにも辿り着くはず。
走って追ってこないのは、俺を警戒しているからか、じわじわ取り囲むつもりか。
だが俺自身、足取りは信じられないほど重く、もはや走るのも不可能。
それでもトボトボ必死に逃げるうちに、映画館が視界に入る。なんとなく懐かしさを感じるし、逃げ隠れる場所としても最適に思えた。
映画館の椅子にゆったり座り込む。
何も映っていないスクリーンを見ながら、頭を振り絞り、改めて考える。どうしてこうなったのか……。
よくわからない。
状況的に、思考能力が正常に機能しないのだ。
それでも発端の出来事くらい、かろうじて覚えていた。
昔テレビで見たゾンビ映画、あんな感じの事件が現実に起きたらしい。
今の俺はゾンビ映画の登場キャラ。こうしてモールに立てこもる話も定番だった気がする。
ただ映画では仲間も一緒だったのに、現実は違う。
最初は大勢いたのが一人また一人、奴らの手にかかって亡き者にされた。
日本中、世界中を探せば誰かいるかもしれないが、そんな長距離移動はもう無理だ。
「この映画館で、俺も始末されるのか」
しみじみ呟いたつもりでも、もしも第三者が耳にしたらモゴモゴと不明瞭な音声だろう。
まともに話すのすら難しくなっていた。これでは遺言も口に出来やしない、と苦笑いの瞬間。
バンッ!
大きな音と共に映画館の扉が、いくつも同時に開く。
ついに奴らが入って来た! 四方八方から!
奴らの手には、丸くて細長い武器。
あの武器の名称は……。
思い出そうと努力する間に、正面の一人が宣言する。
「貴様が最後の一匹だ! 薄汚いゾンビめ!」
ああ、やはり俺で最後か。
ようやくライフルという言葉が浮かんだ瞬間、奴らのそれが一斉に火を吹いた。




