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辺境の少女の冒険  作者: 砂戸明
第1章 辺境の村人アリス
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第8話 森の危機 3

木の陰から、男たちの様子をこっそりと窺う。かなり夜もふけているが、男たちの会話は続いている。


ごめん、後で必ず助けるから・・


捕まった子どもに心の中で謝りながら、アリスはその場を離れ北に向かう。

盗賊たちからある程度離れてからは走って進む。川や滝などの音を聞きながら谷を越え、山を一つ越え、二つ目の稜線に出る。小高くなった場所からさらに北をうかがう。


こちらで方角はあっているはず・・・


生ぬるい風が吹いているため、木々の音でなかなか気配は分かりずらい。

そっと目をつむって集中する。


リーン、リーン  ・・・虫の音、

さわ、さわ、さわ ・・・木の音、

ホー、ホー    ・・・鳥の音、


・・・・・

フ、フ、フ、ガフ、グルゥ・・・


いた!

かすかにうなり声が聞こえる。

声が聞こえるところにさらに意識を集中する。谷を越えた先、黒く染まった山の中ほどに強い気配を感じる。目をこらすと、木々の隙間から、黒い塊が動いているのが見えた。その動きから、アリスは熊だと直感する。


一瞬、風で動いた雲の隙間から月の明かりがもれ、その姿をより鮮明に見せた。

体格はかなり大きく、少し脚を引きずって歩いている。その目は、赤く、赤く、怒りにふるえているように見えた。


フ、フ、フ、グルゥゥゥ・・・


熊は南側に向かって動いている。ときおり、頭はふっては何かを確かめるような動きをしているが、盗賊らの匂いを追っているのだろうか。熊の動きの速さと、盗賊たちの場所までの距離を考える。この熊が夜の間もずっと動くとは考えづらいが、もし執念深く動き続けたとしても、明日の夜明けまでに今の盗賊たちの場所に着くかは微妙な距離であった。


熊はどうも脚を負傷しているようだから、盗賊たちは逃げきるかもしれない。しかし、盗賊たちが逃げ込んだ結果、村が巻き込まれる可能性はかなり高いようにアリスには思えた。


まずは、熊が盗賊たちに追いつく前に、子どもを助けないと・・

そして、盗賊たちを倒す・・・

いや、ただ倒すだけでは、また村の子どもをさらうかもしれない

ならば、殺すのか?

私が?


アリスは、人が人を殺すということを物語などで聞いたことはあったが、自分がやることなど想像もしていなかった。アリスの持っている小刀で首を切れば、あるいは頭に刺せば、人は殺せるという知識は持っているが、自分が人を殺せるとはとても思えなかった。


いざというときは、やるしかない・・・

やるしかないんだ・・・


自分に言い聞かせながら、決意を固めようとする。ただ、いざ小刀を手に持ってみても、手はぶるぶると震えていた。頭をふってまた考える。熊の様子を見る。ゆっくりと動き続けている。


あらためて、熊の気配に意識を集中する。

この声、気配、よし、覚えた。


熊の気配を背中に感じながら、アリスは盗賊たちのいる場所に戻ることにした。

夜も大分たったため、あと数刻で夜明けがくる。その前に捕まっている子どもを何とか逃がす必要がある。帰りは逃げる道筋を考えながら進んだ。


・・・・・


盗賊たちのいる場所近くまで戻ってから、しばらく様子を伺う。

すでに話も終わり、たき火のそばで二人は寝、一人は起きている状態だった。少したつと、起きている者が寝ている人を起こしていた。


やっかいなことに、交代で寝ずの番をしているらしい。

ただ、今起きている男も頭がときどきゆれており、かなり眠い様子だった。

捕まった子どもを見ると、腕を縛られながらも眠っているようだ。


じっと木の陰から様子をうかがう。夜明けまでの時間を意識しながら、じりじりと時間がたつのを待つ。少し、夜の空が明るくなってきた。起きて火の番をしているはずの男の呼吸に意識を集中する。


すー、すー、すー


頭が下がり、ほぼ寝入っている様子だ。

アリスはそっと音を出さないよう、四つん這いになりながら盗賊たちの場所に向かう。捕まった子どもの腕が縛られた木の後ろ側から近づき、手に持った小刀で、腕を縛っていた紐をそっと切る。音を立てないよう、子どもの腕をそっと地面におろしながら、頭の中で逃げる道筋を確認する。


まだ、男たちは気づいていない。腕が自由になった子どもも、まだ意識ははっきりしていない。空がだんだん明るくなってきた。子どもの口をしばっている布を何とか解く。


「ふっ」

その時、眠っていた寝ずの番の男が頭をがくっとさげ、その反動で目を開けた。

「やべえ、寝ていたか・・」

その男の目がこちらを向く直前、子どもを背中にかかえ、アリスは走り出した。


「へ、は? あーーーーー!!」


「おい、起きろ、人質が逃げ出したぞ!」


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