6話
「ただいまぁ~」
「どうしたんですか? その恰好は?」
ミシアさんは目を見開いて驚きつつ、質問してくる。
「あ、雨に急に降られちゃって……」
「雨? 雨なんてこの辺で降っていませんよ? どこまで行ってきたんです?」
「湖!」
私はミシアさんの問いで、出来立ての湖を思い出し、嬉しくなって伝えた。
ミシアさんの反応はというと……。
「この辺に湖なんてありませんよ?」
呆れ気味に言われてしまった。
「ホントだよ!」
「はいはい、それよりも濡れた服を着替えましょうね」
そう言うとミシアさんは、私の髪の毛をボロ布で拭いた。そして、着替えを用意してくれた。
「この服、誰かのじゃないの? いいの?」
私は申し訳なさげに聞いてみる。まあ聞いて誰かのだと言われても、私の服はただいまずぶ濡れ中なので、借りるしかないのだが……。
「孤児たちのみんなの服は共用よ。服を新しく用意する余裕がないですからね」
誰のものでもないことに、ちょっと罪悪感が薄れた。
「それよりミシアさん! 本当に湖あるんだって。お魚いるんだって」
「はいはい、そんなことよりも、風邪をひかないようにしてくださいね」
体調の心配をしてくれるのは嬉しいが、湖を信じて貰えるともっと嬉しい。
(も~、ホントなのに、どうしたら信じてくれるかな?)
考えているうちに夕食の時間になった。今日は質素な硬いパンのみ。昨日の歓迎会だけ、特別にスープがあったのだろう。
そして、就寝になりミシアさんの隣で、夜に目が覚めた私は、暗い天井を見つめつつ考える。
(誰か一緒に行ってくれる子いないかな? あ、でも働ける子は働いているのか。いや、休みの日もあるはず)
私は考えているうちに眠りについた。
翌朝になり、ぼーっとしつつも朝食を食べる。もちろん硬いパン。
朝食を終えると、お手伝いの子たちは出かけて行った。
私もミシアさんに出かけてくると伝えて、湖に向かった。
そして湖を眺めつつ辺りを見渡す。
(なんか物足りないな……?)
そしてふと気づいた。足りないものを! 木だ!
湖の周りを囲むように木が生えていたり、森があったりするとかっこいい気がする。
早速、私は木を生み出すスキルの作成を試みる。しかしやはり上手くいかない。どうやら私は神様でありながら、生命の誕生をさせることはできないようだ。神様見習いみたいなものだから?
私は昨日と同じように、森の精霊を作ってみる。それは上手くいった。
「初めまして女神様」
「初めまして。よろしくね」
挨拶もそこそこに、森の精霊である小さな女の子に、早速お願いをしてみる。
「ねえ、湖の周りに木を生やせる?」
「やってみます」
森の精霊が祈るような感じで何かをしている。すると目の前の土がもこもこと動き出し、ポンと何かの植物の芽が出た。
「ふぅ~、これが精一杯ですね」
「え~」
森の精霊の女の子は、いい仕事したという感じで額を腕で拭った。頑張ってくれたのはいいけど、これじゃあ足りないよ……。
どうしようかと悩む。ウルちゃんはもう湖をすっかり作り上げ、水草なども生えている。ウルちゃんを思い出し、私は気づいた。
(名前か!)
名前を付ければ、能力が高まるはず。早速名前を考えることにした。
「フォル! 貴女の名前はフォルちゃん」
すると、蔓が地面から生えてきて、フォルちゃんの全身に巻きついた。しばらくすると、それがはらりと取れる。フォルちゃんも少女の姿になっていた。
(よし! これならいけるはず!)
ウルちゃんが名前を付けた途端に凄いことをしたので、名前がついたフォルちゃんも凄いことをすると確信しつつ、もう一度フォルちゃんにお願いをしてみる。
「フォルちゃん、もう一回やってみてくれない?」
「わかりました」
またフォルちゃんは祈り始める。すると、湖の周辺から、木の苗たちが出てきたと思ったら、それらは凄い勢いで大きな木となった。
「おお!」
私は成功したことに嬉しくなった。調子にのってさらにお願いをする。
「ねえ、湖の隣に森を作って。食べられる木の実とかができる木とか」
「かしこまりました。では……」
そうお願いすると、湖の木から繋がっていくように、大きな森ができあがった。