心機一転
そのままの勢いで学校を抜け出してしまった。
頭が痛い。ベルトで締め付けられているように。
無理だ。もう頑張れない。いつも他人の目を気にしながら過ごして、周りの普通に合わせようとしていた。でも中学生になってから滅茶苦茶だ。小学校では個性になっていたことも、中学生になったら調子に乗るなと言われる。自分がいくら頑張っても周りのすごい子達に埋もれて結果が出せない、誰にもに褒めてもらえない。
最寄りの駅に着いた。家が近づいてくる。学校を抜け出たこと、親に連絡が入っているだろうか。叱られたくない。
そんなことを思っていたら、家と駅の間にある公園に来ていた。そこには、小学校の頃の親友、蓮がいた。「久しぶりだな、春馬」
何のやりとりも行なっていなかった親友との会話はどこか気まずさを感じる。
「久しぶり、蓮」
「そんなことより、なんで春馬ここいるんだ?」
当然の疑問だった。火曜日の午後1時に公園にいる中学生はおかしい。でも、お前もなんでこんなところいるんだよ。だが今の自分にはその事に気づく余裕が無かった。
「学校、抜け出してきたんだ」
「そっか、、、俺も同じだ」
蓮は小学校でみんなの人気者だったから自分の耳を疑った。
「なんでだよ、なんでお前がそんなことになってんだよ。」
正直いらいらした。顔もいいし、性格もいいこいつがそんなに苦労しているとは思えない。
「小学生の頃はいつもそばに春馬がいて。たくさんの友達が周りにいた。でも、中学生になると俺より面白くて明るい奴がいた。そうしたら、みんながそいつの周りに集まったんだ。そしてすぐに俺は人気者では無くなったんだ。」
「だからって学校抜け出すのはおかしいだろ」
それがどうして、学校を抜け出す理由になるのか自分にはわからなかった。
「あぁ、ごめんごめん俺は不登校になったんだ。同じでは無かったな。話の続きをすると、それからの俺は人気を取り戻そうと躍起になったんだ。で、そんな惨めな俺はいじめの対象になった。そして不登校になったんだ。」
蓮はスッキリしたような顔で言った。不登校になった事。いじめられた事。声色は明るかった。なんでそんなふうに言えるのか自分には分からなかった。
「なんでそんなふうに話せるんだ?そんな恥ずかしいこと」
しまった。嫌な言い方をしてしまった。
「認めてくれたからだよ。親とか変わらず接してくれている友達が。今の俺の状況を。そしてお前も認めてくれると信じてるからだ。」
その言葉に俺は、いや「僕」は思い出した。ここ最近の僕の様子に家族は思いやりの言葉をかけてくれていたことを、沢田も賢吾も心配してくれていたことを。
最近は環境の変化や学校にいる間の七時間の雑音によるストレスによって、いつも余裕が無く人を信用できていなかった。
「ありがとう、蓮。僕を信じてくれて。それから悪かったな。酷いことを言ってしまって。」
これからの学校生活について色々な人と話し合ってみようと思った。そして、
自分の気持ちにもう少し素直になってみようと思った。
気付いたら頭痛はなくなっていた。
「ぼくの学生物語」をここまで読んでくれてありがとうございます。気分が向いたらこの話を別の人物の目線で書いてみたいと思います。