消えたい
学校が始まった。
担任が今日の予定を伝えている。でも、何も頭に入ってこない。そもそも聞こえてこないのだから仕方がない。クラスメイト達が好き勝手に話している。スマホが親に制限された、アイツ宿題やってなくて先生に怒られて泣いていた等々のどうでもいい事柄が頭を支配していく。うるさいよ、本当にうるさい。
「静かにして下さいよ!」
担任が痺れをきらして怒鳴った。うるさい、さらに頭が痛くなった。
教室が静かになった。そしたらすぐに予定を伝え終わった。ホームルームに伝えることなんてあまり無いのだから当たり前だ。でも、この僅かな情報を伝える為に25分がかかった。
そのあと、すぐに授業が始まった。
題して
―集団授業のこれがいけない三選―
まず一つ目、周りの話し声によって何も内容が入ってこない。
二つ目、先生にクラスメイトが反骨精神を出して授業が進まない。(先生が滅茶苦茶なことを言ってきた場合は反抗することが悪いとは思っていない)
三つ目、これらのことに対して先生が怒り、怒鳴られる。
そんなことを思っていたら授業が終わり、昼休みになった。学校の中で最も嫌いな時間だ。
「春馬、食堂行こうぜ」
沢田に話しかけられた。よく一緒にいる賢吾もいる。ここで一緒に行かなければノリが悪いと思われるだろう。
「いいよ、今日はなに食べようかな」
「春馬はいつものラーメンだろ」
賢吾が言った。いつものというほど食べてないだろ。決めつけるなよ。
「ふっ、、、バレたか」
「春馬なんかキモいぞ」
「知ってた」
そんな事を話していたら食堂に着いた。我ながらいい感じに話せている気がする。会話はどれだけリズムよく話せるかが重要だ。その上で気を使わなければならない。
「俺が食券買って並んでくるわ」
「お、春馬センキュー」
「三人分のラーメン持てるか?」
「お盆もらうから大丈夫だよ」
俺は別にお前らの為にやった訳じゃないただ一人になりたかっただけだ。列に並んでいる間、頭の痛みが和らいでいくのを感じた。ここも騒がしいが沢田たちと話しているよりずっとマシだ。
沢田たちがいる席に戻ってくる時に聞いてしまった。
「死ねばいいのに」
沢田たちが俺の陰口を叩いているのを。実に楽しいそうに話していた。最低な顔をしていた。
もう嫌だ。自分が。沢田たちは自分が学校で浮かないように適当に仲良くしてただけのはずなのに、嫌われていると知ったら涙が出るほど心が痛んだ。気付いたらお盆を落としていた。周囲の目線がこちらに降り注いでいた。沢田たちもこちらを見た、だがそっぽを向いた。もう自分がどんな気持ちで、どんな顔をしているかわからなかった。
恥ずかしさ、怒り、混乱、悲しみ、様々な感情が混ざり合い、溶け合い気付いたらその場から逃げていた。
今の自分には、もうここから消えたいという思いしかなかった。
俺は失敗した。