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83.




三年ほどの月日が流れた。詠斗の葬式が執り行われ、メノウの出現は無愛たちが言っていたようにパタリと途絶えた。軍はメノウの消失を発表し、メノウ出現以前のように平和が戻った。……ということはなく、


「有給って知ってますか?」

「んなもんないわよ。諦めなさい」


メノウが消えたことにより明るみになった犯罪が増加し、多少平和にはなったものの仕事は多い。残った【月】たちは軍に所属することとなり、昔と変わって騒がしい毎日を過ごしている。騒がしい原因の八割が本人たちだが……。


「一樹さん、これって」

「それは別ので……。というか、いい加減に白夜も機械操作慣れなさいよ」

「紫音これどうやってやんの!?」

「お前は今までどうやって生活してたんだ」


まともに生活できるのが少ないため、寮に放り込んだ結果、毎日のようにこうして騒がしい日々を送っている。


「一気に騒がしくなりましたね」

「人数増えたしな……」

「これ、あの子が戻ってきたら驚くわね」


……無愛はまだ眠っている。器としての力がなくなったからなのは分かっているが、それでも不安になるときがある。このまま目を覚まさずに死んでしまうのではないか。

無愛たちは既にメノウではなく、人間になっている。身体にどれほどの負担がかかるかは分からない。眠っていて、異変に気づけない無愛ではなおさらだ。


「また暗い顔してる……。そんなんじゃ無愛に怒られますよ」

「無愛なら何も言わずに殴り飛ばしに来るわよ」

「そうそう! 私はそんなに優しくないのだ」


突然後ろから聞こえた陽気な声。三年ぶりに聞く懐かしいどこか幼さの残る少女の声がした。

振り返れば、あのとき眠ったはずの無愛がいた。当然のように、まるで何もなかったかのように。


「やぁ」

「やぁって、あんたねぇ……」

「……どれだけこっちが心配したと」


無愛が目を覚ましたら、みんな言いたいことはたくさんあった。勝手に決めて勝手に終わらせるな。少しはこっちの意見も聞け。もっと自分を大切にしろ。それでも、真っ先に出てくるのはやはり、


「目が覚めてよかった」

「……ごめんね。心配かけて」

「そういうときに言うのは別の言葉ですよ」

「こっちはあなたを信じてずっと待ってたんだから」


一樹たちはここに留まらない道もあった。それぞれ今までの生活もあった。それでもここにいたのは、無愛が目を覚ましたときにそばにいたいからだ。

【死月の災厄】と呼ばれ、恐れられていた幼い少女の笑顔が見たい。そのためにここにいた。自分たちを繋げてくれた一人の少女と、今度こそ共にいるために。


「……ただいま!!」

「お帰り」


これからも、問題は起きていく。それでも、こうして繋がり、共に過ごしていく仲間がいる。


かつて孤独だと思っていた少女はもういない。人々に恐れられていた少女は新しい道を共に歩んでくれる仲間に囲まれている。背負うものはもうない。これからの道は、あのときのように、暗がりに向かうことはないだろう。


無愛たちが最初に望んでいた生活は、少し違う形にはなったが満足な形となった。友に恵まれ、仲間に恵まれ、この先何があっても、今の二人ならば大丈夫だろう。




二〇二四年の四月から始めて一年と約十一ヶ月。「前世最恐災厄双子、今世は自由に生きたいです」これにて完結となります。

こういうものいいかな、と書き始めたこの作品、グダグダだったりおかしなところがあったりでしたね。ゆっくりとやっていましたが、多くの人に見てもらえてよかったです。


それでは、会えたら別作品で。あらためて、一年と約十一ヶ月、ありがとうございました。


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