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「まぁ、分かってくれとは言わないよ。価値観の違いもあるし」
いくら今後メノウによる被害がないとは言え、仲間を犠牲にするという考えは青海たちにはない。だが、無愛たちメノウからすれば、目的が最優先。一人の命で目的が達成できるのなら進んでやる。無論、それが自分の無関係な者であればの話だが。
「本来なかった二度目の人生なんだ。こうして使えるならいいよ」
本来ならば無愛はとうの昔に死んでいる。それなのにこうして生き返り、目的を達成することができる。十分ではないか。
「元々、もっと前に終わらせられる予定だったんだけどね。さすがに不意打ちで殺されるとは思わなかったけど」
「目の前で突然死なれたこちらのことを考えろ」
「会ったことあるのか?」
「無愛たちが死んだ理由の一つ、とだけ言っておくわ。一番やらかしたのは別の方だけれど」
無愛たちを殺そうとしたワケではない。事故のようなものだ。
「さてさて、後ろにいるおっかない騎士様の視線が痛いから、そろそろ終わらせてもらっていいかな」
「……無愛」
「止めないでよ。これでも、かなり考えたんだから」
無愛とて、考えずに決めてるワケではない。自分なりに考えて、こうするべきだと考えているのだ。
「感謝してるよ。妹として育ててくれたし、独りにならないようにしてくれた。こうして人間として生きることもできた」
メノウとして生まれた自分を、他者とは異なる自分を拒絶せずにそばにいてくれた。自分を仲間として支えてくれた。【月】という、居場所を作ってくれた。影夜がいなければ、【月】はなく【死月】は存在しなかった。
「人間として生きれてよかった。【月】のみんなで過ごせた。青海たちと出会えた」
無愛にとって、二回目のこの人生は自分のやり遂げられなかったことをただ消化するだけのはずだった。しかし、影夜がいて、青海たちがいて、こうしてまた仲間に恵まれた。
「ありがとうね。会えてよかった」
無愛はメノウの王の元へ歩いていき、手を差し出す。彼は差し出された手を掴んだ。能力による全ての譲渡。命や記憶、その者を形作る全てのものの譲渡は、短いようで、とても長く感じられた。




