78.
力が強いメノウほど、人間の根本に存在するものが源である。メノウの消滅、共存は不可能に近い。だからこそ、【月】は自分たちの方法で調べていた。
「最初にあなたたちが言ってた計画は」
「この一年で試しはしたけど、結果はあんまりよろしくない。メノウという存在ごと消すべきって結論になった」
「……それじゃあ、あんたたちが」
メノウという存在が消えたら、無愛たちはどうなるのか。人間の形をしていれど、正体はメノウである。人間として生きられる可能性があるのは、影夜くらいなものだ。その影夜も、身体のほとんどはメノウであるため、可能性が低い。
「分かってたことだよ。始まりがあれば終わりがある。それに、これ以上伝説はいらないしね」
「とは言え、子どもたちまで道連れってワケにはいかないもの。文のこと、任せていいかしら」
「そんなの聞いてない。私だって【月】だよ? それに、そのときのための」
「お前たちにやらせるつもりは最初からない」
【文月】は、文は自分の能力を使い、メノウであるという事実を書き換えると聞かされていた。それをできるほどの能力なのかと聞かれればそうではない。しかし、史がいればそれは可能になる。
「史に何かあるのか?」
「写真、見たでしょ」
「あんたたちが写ってるやつよね。けど、それに史は写ってなんて……」
そう、史は写っていない。その写真に写っていたのは【月】と四体のメノウのみ。そして、この場に揃っていないのは、残り一体のメノウ。
「歴史とは、昔から勝者の都合のいいように書き換えられ、語られている。真実を語り継ごうとする者は消され、闇に葬られていく」
「それでも消された歴史は密かに語り継がれていく。そうして人は、言語を理解し、世の中のあらゆる事象や知識に精通している怪異を生み出した」
いつからか人により形を成した怪異。どういった経緯で生まれたのか、存在が定義されたのかは明確ではない。その能力も、姿も、語る者によって異なる。
「【月】の創設には三人の人間と六人のメノウが関わっている。そして、その最後の一人が白澤。事象を操る能力を持つメノウ。薬見史の本来のものだよ」
神の使いであり人々を導く能力を持つ八咫烏と、事象を操る能力を持つ白澤。二人の能力を使い、メノウであるという事象を書き換える。そのつもりだった。
「負担も大きいしねぇ。子どもに身体張らせるのは性に合わないんだよ。それに、みんなと約束もしたからね」
既に亡くなった旧友との約束。それを果たすためにも、自分の力で実行したい。それが例え、自分や自分を信じてくれている者たちにとって、最期を迎えることになったとしても。




