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「……味方、なんですか?」
「覚えてないのか? ……いや、お前はまだ子どもだったから、覚えてないのも無理はないか」
史の質問に意味ありげに答える信樹。青海と笙人は当たり前のように受け入れているようだが、史たちはそうもいかない。青海たちのように【月】のことなど知らないのだ。もしもこれが【月】側の策略であれば? そう考えれば、警戒するのは当然のことだ。
「メノウとは群れることがない。知能は少し違うがな。人間に化け、人間として過ごしていく。そうしていくと、時折自分のことを本当に人間だと思う者もいる」
信樹と一樹はそうなることはなかった。二人は自身の自我を確立しており、【月】という居場所と自分たちの正体を知ってなお、同等に扱ってくれる仲間がいた。では、そうではない場合は?
「いやぁ、パパッと回収してもらえて助かったねぇ。まさか、こんだけ人間に馴染んでいるとは思わなかったよ」
自分がメノウではなく、人間なのだと認識してしまえば、その者はメノウとしての自我を消失してしまう。そうして、死んでもなお、人間の姿のままだったメノウは存在する。
「まぁ、もうすぐ死ぬお前には関係ないね。詠斗の身体から抜け出しても、ここはメノウが逃げられないようにしてある。お前の墓場はここだよ」
「……こいつの能力を忘れたか?」
「君こそ、私の能力を忘れてるようだね?」
無愛の能力の【崩壊】は、ありとあらゆるものを壊す。例えそれが、自身の能力を無効化するというものでも、自身の力が無効化されているという事実さえ、ねじ曲げることができれば。
「メノウの中には複数の能力を持つ者がいるが、私はその中でも特別でね。メノウの王の力を一部だが持っているんだ」
かつて、メノウ研究所の者たちが常軌を逸した実験を行い、生まれた者たち。その中でも無愛は、成功体である者たちの力と、知能持ちメノウの力を持ってして生まれた。
本来存在しないはずの、知能持ちの子ども。人の姿をしながら、完全たるメノウの力を宿す子に、メノウは群がった。メノウに宿る主の下へと帰るという帰巣本能によって。
「【絶対者】。自身を主と認識した者を支配する能力。【月】の中でも一部にのみ明かしていた能力だ。あの子たちの記憶にはなかったろう?」
無愛は予測していたのだろう。こうなることを。だからこそ、決して殺されないだろう者たちにのみ、自身の力を明かしていた。自分同様、メノウである者。理を超越し、永遠を生きるであろう者に。
「悪いけど、君にこれ以上時間を割くつもりはないんだ。このあと、大嫌いな人に会わないとだからね」
メリークリスマスですね、皆様。まさかこの作品がクリスマスを二度も経験するとは……。私の予定ではそんなはずじゃなかったんですが、どうしてですかね……。さすがに二周年を迎えないはずですが、どうなりますかね。




