72.
「私に当てる戦力おかしいでしょ!」
動き回って上手く攻撃を避ける【文月】と、容赦なく攻撃を仕掛ける詠斗たち。
「逃げ回ってばっかりね」
「私は! 戦闘要員じゃ! ないの!!」
「落とせはしないか」
「私たちもそこまで攻撃に向いてないですからね」
飛んで逃げ回る【文月】を銃などを使って落とそうとするが難しい。詠斗も能力の使いどころを見極めているが、【文月】のあとに信樹や無愛を相手する可能性を考えれば手の内を早々に晒したくはない。ゆらの能力で浮くことはできても近づけなければ意味はない。
「黒瀬、インターバルは」
「あと十秒ほどですね」
「でも、能力使っても追いつけなくない?」
紗愛と音葉の【加速】と【変速】で近づくことはできるが、二人が付与できるのは十数秒ほど。そのあと二分ほどのインターバルがあるため、使い勝手がいいとは言えない。そのため、先ほどから鬼ごっこのようになっている。
「メノウの姿にすれば的が大きくなるから殺りやすくはなるだろうが」
「前は【可月】の持ってた薬で暴走状態になったので、難しいかと」
「あの二人がわざわざ相手をすると言ってたが、そこまでの相手とは思えないな」
青海と笙人の二人が言ったのは【可月】が遙翔だと確信していたから。それを詠斗たちに告げなかったのは、邪魔をされたくなかったのだろう。
「にしてもあいつ、どこに向かってるのよ……」
「元の場所に戻ってるワケでもなさそうだな」
「警戒するに越したことはないですね」
【文月】が攻撃してくる様子はない。前回とは打って代わり、何かを待っているように見える。
「どこまで飛ばされてるのよ。あのバカは」
「誰探してるのか知らないけど、諦めなさい。この人数差であんたに勝ち目はないわよ」
「……なんか、自分たちが正義って信じてるみたいだけど、それは何も知らないからだよ」
【文月】は冷ややかな目を向ける。
「あなたたちの中に裏切り者がいるよ。ずっと前から。その人はね、【死月】と仲良しなの。その人と合流できれば私の勝ち」
「わざわざ言うなんて、余裕そうだね」
「事実を言ってるだけ。それに、あなたたちが勝つことはない。全ては【死月】の手のひらの上なんだから」




