71.
「バラけさせ、撃破か。及第点だ。だが」
信樹は自分の相手となる史たちを見てため息をつく。
「これでは俺が子どもを虐待するみたいだな」
そう言いながらも、手加減するつもりは一切なく、大鎌を取り出す。影夜から、軽々と大鎌を振り回すため、大鎌を注視しながら攻めろと言われている。本来ならば一振が重々しいものだが、信樹はそれを一切感じさせず、まるで何も持っていないかのように素早い身のこなしを見せ、史たちを攻撃してくる。
「お前たちの生死に興味はないが、対象の元に速く行かなければいけなくてな。恨むのなら、この配置にした【闇月】を恨め」
四方に避けた史たちだが、正直なところ、勝ち目があるとは思っていない。影夜に言われ、この四人で信樹を相手することになったが、この中で直接攻撃できるのは雫の【三態】のみ。光哉の【屈折】はタメがある上に軌道を読まれやすい。尊の【逆転】も攻撃にするのは難しく、史の能力もどこまで通用するか分からない以上、無闇に使えない。
「ハンデだ。能力は一つのみにしてやる。かかってこい」
「ずいぶん優しいな」
「ガキ相手に全力出すバカがいるか。それに、ここは【永月】に作らせたが急ごしらえ。壊れれば【腐月】に迷惑だろう」
他人への迷惑を考えられるのならば街中であんなに暴れるなと言いたいが、言っても聞くはずがない。それに、相手が油断している今がチャンスだ。
「距離詰めますか?」
「大鎌の間合いに入るのはリスクだろ。このまま距離維持でいい」
距離を保ち、信樹を近づけないように攻撃する史たち。傷をつけられてはいないが、倒すのは無理。それならばできるだけ青海たちが来るまでの足止めをする。信樹の乱入が最も勝率を下げる。だからこそ、攻撃力はなくとも信樹が相手取るのを嫌がるであろう中距離主体の四人に任されている。
「【可月】と【文月】を真っ先に討伐か。よくもまあ、アレを彼女に当てようと思ったものだ。こちらに寄越して時間稼ぎしてくると思っていたが」
「アレ……?」
「聞いてないのか。……まぁ、あいつは昔から必要最低限しか伝えないからな。当然と言えば当然か」
教えても問題はないだろうと信樹は言う。
「前々から起きているメノウ失踪事件。その犯人がお前たちの隊の中にいる」
「なっ!?」
「今回の分断はそいつの排除もあるのだろうな。お前たちに話されていないのは、確信を持っていないからなのだろう。もしくは、信用されていないのか」




