66.
無愛は史の質問を答えたあと、影夜と信樹の戦いを眺める。史は無愛を警戒しながらも、勝てないことが分かっているため、手を出さずに影夜を見守っている。
「……お前、こんなフィジカル強かったっけか」
「こちらは数百年は生きている。リセットされたお前と同じにするな」
影夜は持っていた銃と小型ナイフで、信樹は影夜が能力を使わないからか、能力を使わずに大鎌で戦っていた。影夜の知る信樹の戦闘スタイルは、能力による多種多様な攻撃で敵を翻弄し、身を潜めている味方に最後を任せるという支援に回るもの。体術もできることは知っていたが、これほどなのは想定外だった。
「お前のような混ざりモノでもないのだ。試作品のお前が、俺に勝てると思うなよ」
「普段動かねぇクセに、どこにそんな体力あるんだか」
息を切らし、肩で息をしている影夜に対し、大鎌を振り、影夜よりも動いているはずの信樹は汗一つかいてすらいない。
「ずいぶんと弱くなったな」
「クソゲーかよ」
【月】であったときより影夜が弱くなっているのは事実。しかし、それを踏まえても信樹の実力は異常だ。人間としての常識を外れている。
「……やべ。信樹撤退。青海が来た!」
史の隣で二人を眺めていた無愛が動き出す。青海だけならば問題はないが、青海と影夜の相手は無愛と信樹でも難しい。何より、史が厄介だ。
「おいおい、逃げんのかよ」
「まだ傷も癒えていない状態で出てこられてる。無理はしないとの約束だ」
「……能力が効いてないのか?」
無愛の能力である【再生】を使えば大抵の傷は数分足らずで完全に癒える。傷と言うのが前に青海がつけたものを指しているのならば、癒えていないのは不自然だ。
「使っていないのだろう。こちらも何度も癒すと言っているが聞く耳を持たない」
わざわざ傷を癒さない理由などない。しかし、無愛が傷を癒していないのも事実だ。
「……次は【月】として会おう」
信樹はそう言い残し、能力を使って消える。無愛の方を見れば手を振って消えた。情報はほとんど抜き出せていない。目的もいまだ不明。青海たちが来たと分かれば撤退。その上後手に回るしかない。
「で、どうだったのよ」
「見ての通りだ。有益なのはなし。史もまだ実戦は無理だな」
「あんたらが外に出ると毎回被害が出るわね」
「そりゃ、何か起きる場所に向かうからな」
史に関しては巻き込まれ事故だが、狙われている以上、仕方がない。
「少しは話せた?」
「信樹とは少しな。たぶん、次が最後だ」
【月】として会う。最後は敵としてではなく、かつての仲間として。もしそうならば、無愛たちの目的が叶うか、もしくは青海たちが阻止するのか。どちらにせよ、相手は決着を着けるつもりだ。
「慧斗がそれまでに目覚めるといいわね」
「……無理だろうな。あの様子じゃ」




