62.
「教祖殿は熱心に信者集めか」
「……みな、彼女に仕える子たちですよ」
無愛の傷がなかなか癒えず、準備期間と見ている信樹たちは各自でやるべきことをしていた。
「【死月】に救われた者たちはこうして存在しています。彼らが【死月】を悪と見ているが故に理解されぬだけで、【月】とは元来中立であり、自分たちを守るために行動しているにすぎません」
その過程で人が増えたのだと語る信樹に、【可月】はそれだけじゃないだろと内心呆れる。信樹たちと共にいる時間は一年にも満たないが、それでも分かることはある。信樹や【文月】の無愛への敬愛やルシファーの無愛への信頼というのは凄まじい。同じ志を持つからというだけでは説明のできない何かがあるのだろう。
「他の【月】は見つかったのか?」
「懐かしいのが一人、来ていますよ」
信樹についていき、外に出ると、近くにあった植物が急速に成長し始めた。しばらくすれば植物は二人を取り囲み、攻撃してくる
「……荒い挨拶ですね」
「何がどうなってる」
「【華月】の能力です」
信樹が能力で辺りの植物を消すと、日傘を差している一樹が見えてくる。ゆっくりと歩いてくる一樹の足下から植物が生え、一樹が通った道の植物は周りとの違いが一目で分かるほどに成長していた。
「久しぶりね」
「えぇ、久しぶりです」
「そっちははじめまして。【華月】よ」
「……【可月】だ」
【華】と【可】。まったく異なるが、どちらも同じ「カゲツ」というのは、奇妙なものだ。
「全てを【可】とする【月】。いいじゃない。私は好きよ」
「……どうも?」
「もう少し自信を持ちなさいな。あなたは無愛から【月】の名を与えられた。時代が違えど、同じ【月】なのだから。あなたのせいで甘く見られては亡くなったあの子たちが浮かばれないわ」
亡くなった、という言葉に分かりやすく【可月】が反応する。分かっていた。【月】がいなくなっていることは。無愛がたまに月を眺め、その度に誰かへの祈りを捧げていたことも。そしてそれが、かつての仲間へのものなのだろうことも。
「頑張りなさい。私は中立で行かせてもらうわ」
「他の者たちも?」
「【腐月】はね。あの二人は知らないわよ」
【月】たちの会話を聞いていると、時おり思う。自分がもしいなければ、【月】は今でもこうしてみなが集まり、立場など気にする必要はなかったのではと。
(……そうすれば、あいつらも)
【可月】の中にあるのは後悔。しかし、後悔しているだけでは意味がない。これからを考え、行動しなければ。
「ルシファー様は」
「中であの子と」
「あらあら……。しょうがない子ね」
一樹と信樹は中へと入っていく。【可月】は二人を追う気にはなれなかった。
しばらく外で空を眺め考えていれば、ポツリポツリと雨が降り始め、それは勢いを増していく。それはまるで、【可月】を責め立てているように感じられた。




