59.
一樹と呼ばれた女性は青海たちの顔を見て、少し驚いた顔をした。正確には、青海たちの後ろにいたミカエルを見てだが。
「これはこれはミカエル様。お久しゅうございます。兄君と喧嘩していらしたのですか?」
「……懐かしい気配だからついてきたら、そういうことですか」
呆れたようにそう言うミカエルに知り合いかと尋ねれば、自分と同じ存在だと答える。
「はじめまして。【月】の一人、【華月】花宮一樹。初期メンバーの一人で、そこにいるミカエル様と同じメノウよ」
「あんたら知り合いなの?」
「【勇気】のウリエル。私と同じ天使のメノウです」
そうなのかと一樹の方を見れば、眼帯を取り、赤い強膜が晒される。紅色の瞳なのもあり、境界線が見えにくい。
「さっきの写真で無愛に巻き付いてた奴だ」
「あの植物!?」
姿を変えられるのは分かるが、違いすぎないかと言う青海たちに、元々は小さな木だったのだと一樹は説明する。
とある山に根を張っていた小さな木が次第に成長していき、その山で人が相次いで行方不明となった。人は神隠しだと言い、その山でも一際大きく育った木を神木と崇め祀り、植物や山への信仰を強めていった。人は山へ入ることを躊躇っていたが、誤って山に入った子どもたちに何もないことを確認し、恐る恐ると山に入り、無事に戻った。
そうして、恐れながらも崇め祀り、徐々に神木はメノウとなり、一樹の意思を生み出した。
「天使のメノウってそんな風に生まれるのね」
「私がこのパターンと言うだけで、他は知らないわよ? それに、私の場合は子どもたちの勇敢さと無謀さ、大人たちの山に再び足を踏み入れる勇気と恐れが集まった結果だもの」
「だから【勇気】なのか」
不思議なのは、一樹の能力は今までの知能持ちのメノウたちを見れば【勇気】であるはずだが、一樹は【華月】。【勇気】ではない。
「……あぁ、そう言う」
「分かってくれたようで何より。あなたの想像の通り、私は能力の複数持ち。一つは【勇気】。もう一つは【月】の由来である【植物】よ」
「でも、影夜たちの遺したやつだと、それって転生ってやつをしないとじゃないの?」
「人間はな。メノウは死んだら基本んなことしねぇよ」
確かにどこにも全ての生命とは記載されていなかったが、それにしてもではないのか。
「……あれ、丸々ブラフとかじゃないよな」
「丸々ってワケじゃない。昔に【月】の何人かでそういう実験をしたときにたまたま見つけたやつを記録してただけだ」
「あの実験、甦ったものの、生き物って呼べなかったじゃない」
死んで生き返りはしたから嘘ではないと子どものようなことを言う影夜と、あれを生き返りと言うのはどうなのかと呆れる一樹。
影夜と慧斗も仲がよかったが、はじめにあんな感じだったからか、【月】同士で仲がいいというのはある意味はじめて見る光景なのではないだろうか。影夜と無愛は兄妹であり、青海たちが会った【月】は無愛に敵対することがなく、反対に影夜には少し当たりが強かったように思える。
「それで? んな世間話するために来たんじゃないだろ。本題は」
「ルシファー様とラファエルがあちら側にいるから不利よって伝えに来たのよ」




