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57.




一か八かだった。【可月】の薬により暴走状態となった【文月】により一気に劣勢となった青海たち。どうなっているか状況が分からないが慧斗が負け、信樹が勝ったと思われる二人。そう遠くはない空で両者譲らず戦闘を続けるルシファーとミカエル。

そもそも、影夜は無愛を相手にするつもりはない。本気になれば勝つのは間違いなく戦闘慣れしている無愛だ。だからこそ、油断したタイミングである作戦を行った。


(影夜の【共有】で【空間】を使われたのかっ!!)


青海が【文月】に最大威力の攻撃を放つと同時に無愛の【空間】の能力を【共有】し、一瞬にして【文月】と無愛の位置を入れ換えた。


「【死月】!」

「ざけんな……。なんだよそれ」


【可月】が無愛に駆け寄り、傷を見るが、そう簡単に治せるワケでもなければどうにかできるワケでもない。悲鳴が聞こえ上を見上げれば、影夜が【文月】に致命傷を与えている。


「お前も動くなよ」


笙人が【可月】の首元に短剣を当て、これで制圧だと思われたが、


「【置換】」


一瞬で全員の位置が変わり、味方ごとに集まることとなった。


「ずいぶん派手にやられましたね」

「るっさい!!」


ボロボロな慧斗を抱えた信樹が現れ、今日は痛み分けということで、と去ろうとする。


「【慧月】はお返しいたします。しばらくは起きないでしょうけれどね」

「慧斗!!」


信樹は慧斗を能力で青海たちの目の前に置き、用はないと帰ろうと【文月】を転送する。


「待ちなさい!」

「今回は痛み分けです。そちらもずいぶん消耗しており、こちらも姫と【文月】が重傷。【慧月】も死にはしなくとも早めに処置を施した方がいいですよ」


そう言い残し信樹は自身と無愛、【可月】、ルシファーを転移させる。

青海たちから見れば余裕そうに見えたが、内心焦っていた。【文月】が負けることは想定しておらず、無愛もここまで負傷するとは思っていなかった。


「姫、あまり動かれては癒える傷も癒えませんよ」

「私と遊んでたのに!!」


傷の手当てをしようとするも、影夜に相手にされなかったのが嫌だったのか癇癪を起こす無愛。宥めやうにも、こうなってしまうと手がつけられないためどうしよう もない。

しばらくすれば能力で治すか頼みに来るだろうと部屋を出る。信樹は先程までの穏和な雰囲気ではなく、どこか冷たい雰囲気をまとう。


「【死月】は昔からああなのか?」

「昔から……まぁ、そうだな。あの方は愛されたがりだからな」


そんな風には見えないと返す【可月】に、あの方のことを知らないからですよ、と信樹は返す。

人から見れば無愛は冷酷であり、残虐な存在なのだろう。しかし、【月】からすれば、無愛という存在は慈悲深く、信仰対象であったり、強敵(ライバル)であったりした。


「誰よりも仲間思いなのだ。そして誰よりも約束を守ろうとする」

「………それは、少し悪いことをしたな」


【可月】が思い浮かべるのは、約一年前の、無愛と出会ったあのとき。必死に約束を守っていた無愛に約束を破らせてしまったのは【可月】だ。


「悪いと思うのなら行動で示せ」


信樹は決して【可月】を信用しているワケではない。無愛が置くと言うから共にいるだけだ。信樹が信じるのは彼らのみ。あの日、あの場所で、誓った者たちのみ。


(お前が傍にいないのは、目的があるのだろう?)






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