54.
【月】同士での戦いが始まり、周りへの被害を考えてか、四名は当たり前かのように上空で戦っている。一人は事象を壊し、一人は空間を固め、一人は神の力を宿し、一人は風を味方につけて。
次第に慧斗と信樹は影夜と無愛の邪魔になると判断したのか、少しずつ移動しながら戦う。
「相変わらずね……」
「バチバチだぁ」
「被害拡大しなきゃいいんだが」
「……手短に済ませるぞ」
あちらは【可月】が刃物を産み出し、それを少女が投げ攻撃するという戦法を取る。対して青海たちはかつてのように青海、紗愛、雫の三名が前衛となり、残りが後衛となってサポートといった形を取っている。
「衰え知らずじゃん」
「【変速】と【加速】でまだ上がる。警戒しておけ」
「よく知ってるわね」
こういう戦闘時においての訓練もしておけばよかったと内心舌打ちをする青海。雫の能力も【可月】の持つ能力によりほぼ無意味に終わり、紗愛は筋力がそれほどあるワケでもないため速度で誤魔化してはいるが、おそらくそろそろ限界だろう。この部隊は決定的な攻撃を入れることができる人物がいないのが難点だ。青海の【反重力】では仕留めきれない場合もある。
「……笙人」
「たぶんだが、そうだろうな」
長年生きていたが故の勘か、はたまたずっと命を預けていたからなのか、二人はとある結論に至った。
【可月】の戦い方、身のこなし、わずかに垣間見えるクセ。
「あんた、生きてたのね」
「……お前たちの知る者なら死んださ」
「あらそう。なら、ぶっ飛ばして連行ね」
「元からそのつもりだったろうが。じゃじゃ馬娘」
先ほどまで全力を出していなかったのか、比ではないほどの速度で【可月】の顔に蹴りを入れた。
「ちょっと、あんた攻撃無効できるんでしょ!?」
「できるのはあくまで能力によるもの。物理は負担が大きい……」
「あら、フード取れないのね。あんたの面を久しぶりに拝みたかったのだけれど」
少女は気づいていない。先ほどから能力が上手く使えていないことに。それを気づくことすら許されていない。
「【文月】、能力を使うな!」
「えっ、きゃ!!」
少女──【文月】が攻撃しようと能力を使おうとするとそれは狙った青海ではなく、自身に向かった。
「笙人の能力は【電波】と言っただろ。脳は電気信号で動いてると知らないのか」
「厄介すぎでしょ。そんなことされたら能力使えないじゃん!!」
実際のところ、脳波を狂わせるのは笙人自身にも負担が大きいため何度も使用はできない。だが、いつされるか分からないとなれば、二人は容易に能力は使えなくなる。
「諸刃の剣だ。笙人の負荷が大きい。対して俺たちは再生能力持ち」
「持久戦ってこと? つまんなっ」
そう言うだろうと思ったと、【可月】は一つのカプセルを【文月】に渡す。
「どうせだ。実験を手伝え」
「はいはい。一応聞くけど、これ何」
「メノウの能力を一時的に底上げする薬だ。無論、戻ったあとの負荷が想像できないがな」
【文月】はドーピングって面白くないんだよねと文句を言いながらも、策を思いつかずに薬を飲み込む。
「………相変わらず、化け物じみた能力ね」
「【死月】の意見を取り入れただけだ。それに、話してる暇はあるのか?」
【文月】は薬の影響でか、人の姿を保つことができず、巨大な三本の足を持つ黒鳥の姿になる。
メノウとは人の欲望や負の感情などで生まれる存在。人はいつの時代も、神を崇め奉り信仰し、ときには恐れていた。
いつからかメノウは信仰すらをも自身のモノとし、現れ始めた。
「八咫烏……」
神の御使い、導きの神として信仰こそが、【文月】の正体であり、力である。




