49.
二人の話が終わるまで待っていることおよそ十分。ミカエルがため息をつき、青海たちの使う言語を使い話し始めた。
「……やれるのですか。私を含めてもかなり危険なものですが」
「やるしかない。時間がないんだ」
「終わったなら何するつもりなのか説明しなさいよ」
「無愛が行動起こしたタイミングであっちを潰す」
「後手に回るってこと?」
基本的に軍は常に後手に回る。メノウの出現は予測不可能であるため、被害最小限でのメノウ討伐が目標。しかし、今回の相手は無愛。自分たちと同じ姿形をしていて言語も話す存在だ。わざわざ後手に回る理由がない。
「理由は二つ。一つは相手はこっちの行動や位置を把握していてもこっちは相手の行動や位置を把握していない」
「……待って。こっちの行動が把握されてるの?」
「絶対バレてますね」
そう確信しているのは、何も無愛が相手だからというワケではなく、しっかりと根拠があるのだ。
「【月】が少なくとも三人、あっちに付いてる」
可能性ではなく確定でな、と青海たちに伝える。青海たちが頭を抱える中、史だけは状況が飲み込めずにいた。影夜と無愛のことをぼかして伝えられているため、慧斗を含めた三人が【月】であることも、影夜と無愛が転生を果たしていることなども、何も知らされていないのだ。
「【月】って、伝承ですよね?」
「残念なことに、いるのよ」
「お前を勧誘したのが創設者の一人だぞ」
言ってなかったかといった顔をする影夜と、忘れてましたねとわざとらしい態度の慧斗。
このとき、史は理解した。この二人を敵に回すのはダメだと。
「それで、誰があっちにいるとかは分かるの?」
「【信月】はほぼ確定だろうな。あいつ無愛の狂信者だし」
「【永月】がどうかですね」
その名前を聞き、青海たちは顔をしかめた。直接会ったことはないが、嫌な思い出が甦る。【永月】の能力のせいで何度も同じ場所を歩かされたのだ。
「あなたたちの味方ですか?」
「敵」
「味方が三割、敵が七割ですかね」
そこは味方が七割であってほしいところだが、以前に出会った【遊月】、不和悠悟も無愛には友好的だったが影夜に対しては友好的どころか敵対視している節があった。
「【月】は基本的に中立だからな」
「……その中立が敵になってるんだけど」
「あくまで予想だ。【信月】に関しては無愛が見つけていたらの話だしな」
見つけられなくても向こうから出てくるだろうが、と付け足す影夜。予想と言いながら、【信月】が無愛と共にいると確信しているのは【月】としての信頼なのか、それとも【信月】の無愛への忠誠心への信頼か。
「まぁ、あいつを相手するよりはマシだ」
影夜が誰にも聞こえない声量でそう呟いたとき、地響きが起こった。
「……動き出しましたか」
「案外、速かったな」




