48.
無愛が何かしようとしていることを知らない影夜たちは、古びた屋敷の主──【正義のミカエル】との交渉を行っていた。
「……あなたの妹が、アレと行動しているという根拠はなんですか」
「あんたらみたいな人間社会に身を隠してる奴ってのは特徴がある」
影夜はミカエルが左耳にのみ着けているピアスを指摘した。
「あんたらはその莫大な力を何かしらの装飾品に付いている宝石にして抑えてる」
「どうしてそう思うのですか」
「外にいたときは着けてなかったろ。中に入って翼が見えなくなったときにはそれが着いてた」
ミカエルは少し驚いていた。
いくら自身の知る彼の子であろうと、人に呑まれ過ごしていた自分の足元にも及ばぬ青年。そう思っていたが、その洞察力、思考は並外れていた。
「……いいでしょう。協力いたします」
「案外あっさりなのね」
「私としても、アレには思うことがありますので」
ミカエルとしても、これ以上好き勝手されるのは困る。影夜たちとの接触はある意味タイミングがよかった。
「あの、あそこにそんな人いましたっけ」
「遠くから視てましたよ」
史が聞いた話では無愛が発見されたのは史が接触したときのみ。そのとき彼女の傍には誰もおらず、不思議だったが遠くにいたと言うのならば納得だ。
「アレは享楽的でしてね。あなたの妹といるのもお遊びでしょう」
「半分はそうだろうな」
「もう半分は違うと?」
多くを見えているのはミカエルだろう。けれど、ミカエルの知らない多くのことを知っているのは影夜だ。それには、ミカエルたちの望む存在も。
「無愛は完全なメノウ。それも、とある能力を継いだ存在だ」
「……あなた、あちらの言語は使えますよね」
そう言い、史たちには聞き取れない不可思議な音を発し二人が話し始める。
「影夜さんってすごいんですね」
「まぁ、八割はメノウだし、あいつ能力複数持ってるからね」
「能力複数はあり得なくないですか?」
「造られた存在だからですよ」
造られた存在だからと言うのは納得できることではないが、こうしてメノウと話し、青海たちから信頼を得ているのは影夜の実力。能力の話も嘘ではないのだろうと分かる。
「…………ちなみに、あの二人の会話って」
「我々の知る言語じゃないのでなんとも言えませんね」
「メノウの言語ですかね」
「だとしたらなんであいつ知ってるの」
メノウだとしても人間に混じりメノウの言語を知るはずのない影夜が話せるのはおかしい。
「あいつら、森でメノウに育てられてたろ」
「あの人たち、保護されるまで森にいたんですか?」
「なんなら逃げたわよ」
保護されるはずなのに逃げ、平和に過ごしていたが、結局は軍に入ることになったため、逃げる必要もなかった。しかし、当時の二人にそんなこと予想できるはずもなく、面倒だからととりあえず逃げた結果、軍で騒ぎになったことを当の本人たちはいまだに知らずにいる。




