45.
「あの、いくらなんでも速すぎませんか」
「善は急げってあるから」
史が返事をしたあと、予備であった軍の服に着替えさせ、どこかに向かい始めた。どこに行くのかと史が聞けば、影夜がここのお偉いさんの部屋と答え、入隊すると宣言して数分の自分が会ってもいいのかと先ほどから聞いているものの、大丈夫という返事ばかりが返ってくる。
目的の部屋に着くと、青海ではなく影夜がノックをする。
「詠斗入るぞ」
「呼び捨て!?」
返事が返ってくる前に影夜が扉を開け、中に入るが叱られる様子はない。青海たちも入っていき、史が中に入ると、そこには一人の男がいた。
「こいつ入隊させるってのと、前から言ってたのに会いに行くからその報告」
「……せめて返事を待て」
「いいだろ別に」
ため息をつき、史に目を向ける男は、東雲詠斗。青海たちの上司であり、永い年月を生きている人物である。
「東雲詠斗だ。話は聞いている。災難だったな」
「え、あ、いえ!」
「顔合わせ終わりでいいか?」
「少し待て」
出ていこうとする影夜を止め、少しおかしなことを問う。
「お前の能力では生命は造れない。そうだったな?」
「造れたらこんな面倒なことになってないだろ」
「お前たちが今回遭遇したメノウ、どう思う」
青海たちがいる場での問い。自然発生したメノウと何かが違うと詠斗は踏んでいるのだろう。そしてそれが、
「……無愛がメノウ造ってるとでも言いてぇのかよ」
「アレの協力者の可能性もある。それに、ありえないとは言えないだろう」
詠斗としても考えたくはない。アレなどと人として扱っていない節はあるが、詠斗なりに二人のことを気にかけている。だからこそ、【月】だと知りながら二人の生活を支え、軍に入ることも許した。
「あの、大丈夫なんですか。上司なんですよね」
「本当はダメだけど、長官は影夜と無愛の保護者的な立ち位置だから」
二人の言い合いが終わるまで待つこと十分。よくも飽きないなと思っていると予想外のところから史に飛び火した。
「だいたい、新人の能力については把握してるのか」
「一般人は能力使用禁止だの言ってたのはどいつだよ」
何故かいつの間にか話の種にされており、青海たちもそういえば聞いていなかったなと史の方を見やる。
「聞いてなかったんですか」
「急いでたし、そもそもあんたらの能力だって実戦にぶん投げてから聞いたじゃない」
「そんなことあったんですか?」
見た目は史たちと変わらないが、中身は既に百を越えている青海と笙人としては、それが当たり前だったのもありかなり言い合いをしていた。
「隊長と副隊長はかなり生きてるからね」
「若く見えますけど」
「見た目に騙されちゃダメだよ」
能力という人の枠を越えた力のあるこの世界において、見た目と中の年齢が同じではないこともそう珍しくはないだろう。青海たちは軍の者の能力により成長を止めていたが、中には自分の能力で年齢を操作する者もいる。
「史の能力って結局何?」
「そんなに大したものじゃないですけど」




