35.
無機質な目を無愛に向ける遙翔。無愛は動こうとするも楔が邪魔で動けない。
「逃げられねぇよ。特別製だって言ったろ」
「……何、するつもり」
「少しばかり調べるだけだ」
その調べるが何をかは分からない。何より、無愛の知らない何かを知っている。そんな遙翔に無愛は、少し恐怖を抱いた。
(……バカみたい)
かつて恐怖と畏怖の対象であった【死月の災厄】である自分が恐怖を感じるのかと苦笑する。
「…笑う余裕があるんだな」
「…………そうだね。うん。そうだ」
あの【死月の災厄】が。死を招く存在と恐れられていた自分が、人を恐れるのかと。
「ある意味区切りがいい…」
ガラリと雰囲気を変えた無愛に、遙翔は急いで下がる。
「………【崩壊】」
「無駄だ。それは能力を打ち消すってさっきも………は?」
遙翔が次に見たのは、無愛に打ったはずの楔がボロボロと崩れ、ゆらゆらと無愛が血を流しながら立ち上がる。
「能力は使えないはずだ。なんで……」
「………君が、言ったんだろ」
メノウの王たる器。遙翔が言った無愛の、【死月の災厄】の正体。
「メノウに、王たる存在に、こんな玩具が、通じるとでも?」
無愛は自身の正体を知らない。そのはずだった。
「自分のことは、自分が一番、知ってる」
影夜が必死に隠していた無愛のこと。それは影夜なりの無愛への愛によるモノだ。
生き物とは、自分と違うモノを異物として排除する。メノウとして産まれてきた無愛の正体を知れば、どうなるかなど想像に容易い。
無愛の正体は、一部の信頼できる【月】にのみ明かされていたモノ。
遙翔が知るはずもないのに知っている。それはつまり、
(【月】の誰かが殺されたか……)
遙翔と手を組んでいるとは考えないのを見るに、無愛も【月】を信頼しているのだろう。
「【可不可】か。確かに強い」
「チートが!」
遙翔は無愛の周囲の空気を消し、生かして捕らえることを頭から消した。
本気を出した【死月の災厄】を生け捕りにできるはずがないと。
「浅はか」
空気がなく、息をできないというのに無愛は平然と喋る。
「真空状態だぞ!?」
「その程度でメノウは死なない」
一瞬で遙翔の目の前に移動した無愛は、遙翔の顎に拳を入れる。が、それも寸でのところで防がれた。
「………【崩壊】もそこまで便利じゃないか」
「メノウも生物だ。呼吸ができなければ死ぬし空気がなければ音が伝わるワケがない」
遙翔は常識に囚われている。だからダメなのだ。
「【崩壊】は、ありとあらゆるモノを壊す。それは能力とて同じ」
少し本気を出した無愛を止められる者は、いるのだろうか。
「何回やるんだよお前は」
大変申し訳ございません。
「ちゃんと、時間通りに、投稿しろ」
まだ九時だから平気だろとか思ってたアホがいるんですよ。
「時間をちゃんと見ろバカ」




