34.
「それで、何をお求めで?」
「……青海たちの、長生きの、理由」
「あぁ、それは単純だよ。俺の能力」
東遙翔、能力【可不可】。
本来行うことができないモノを可能にし、本来行うことができるモノを不可能にする。
「……つまり、それで」
「そう。人が死なないということを可能にした。つっても、そんな大人数できるワケでもないからな。数人に絞った」
けれど、それには問題がある。
「死なない。それはつまり、不死。けれど、青海たちは、不老でもある」
「肉体の全盛期を保たせてる」
実質的な不老不死。それを可能にした存在。
「……解除方法は」
「俺が解くか死ぬか」
死ぬなんてことはない。青海たち同様のモノを自身に行っているのは明白。解くこともしないだろう。科学者など自分の興味を持ったモノを深く深く知ろうとする者は、自分の研究の成果を壊そうと考えない。
「解いて」
「何故解く必要が? こうなったのは本人の意思だ」
「理を、崩してはならない。いずれ、大きな、歪みとなる」
「………君がそれを言うのか」
一瞬だった。
無愛の上に楔のようなモノが複数現れ、それに気づいた無愛は急いで避けた。
それでも、的確に無愛を狙った楔のうち一つが、右腕に突き刺さる。
「…なんの、つもり」
「避けられたか。もう少し打つかな」
再度無愛の上に楔が現れる。先ほどの比ではない。避けようと必ず一つは当たる量だ。
「!?」
楔の量に驚き、逃げ道を探すもない。動くのが少し遅れてしまった無愛の腹部と左足に突き刺さり、その勢いで床に倒れた。
「能力を打ち消す特別製だ」
「……な、んで」
「こんだけ血流しても喋れるんだな。普通は失神するか痛みで声を出せないんだが」
無愛の問いには答えず、ぶつぶつと何かを言い始める。
何がしたいのか、どうしてこんなことをするのか聞きたいのは山々だが、まずは楔をどうにかすべきだと身体を動かそうとする無愛の左手に楔が打たれた。
「っ…!」
「あぁ、痛みはあるのか」
前世では嫌と言うほど負った傷は、今世ではまだ両手で数えられる程度のモノ。
痛みに弱くなったのだなと考える無愛を見て、遙翔は冷たい視線を向けた。
「先程の疑問に答えよう。俺は【月】について調べていた」
「……過去形、なのは、見つからないから?」
「【月】を調べるうちに、対象が【死月】になっただけだ」
【月】全体から【死月】一人に絞ることで情報が少なくなるが、情報の真偽は確かめやすい。表立って行動していたのも【死月】のみで、他の【月】も追うよりはいいだろう。
「一つ聞きたいんだがいいか?」
「答えなきゃ、殺すでしょ」
「殺しはしない。あんたは唯一の存在だからな」
「唯一……?」
「あぁ、知らないのか」
当然かと呟く遙翔に、無愛は理解が追い付かない。
「人の手により生み出された存在」
何故遙翔が知っているのかは不明。しかし、
「メノウの王たる器。それが【死月の災厄】の正体だろ?」
無愛の知り得ぬ情報を知る、ナニカであることは確かだ。
「結構トんだな」
グダるのはもういいからね。
「まだ、全然、続くけどね」




