33.
医療施設に行った翌日。
行く行かないの論争が巻き起こっていた。
「だから、行く必要ないだろ」
「研究の、モノは、役に立つ」
無愛一人だけは危ないと言う影夜と、研究のことを知るのにもあちらの条件である自分一人の方がいいのではと言う無愛。
二人が言い合いをしているところを見たことがないこともあり、青海たちは困惑している。
「すごい喧嘩するじゃんか…」
「この程度ならまぁ、昔もありましたよ」
「一時間続いてるんだけど」
「前は口喧嘩から能力バトルになりましたから、それに比べれば」
「なんであの二人の喧嘩で乱闘始まるのよ……」
【月】の中心人物である二人の意見が割れ喧嘩を始め、大半は遊び感覚で乱闘をしていた。数名、本気で殺しにかかっていたが。
「遊び感覚が八割、本気が二割いましたね」
「【月】って仲悪いの?」
「人によりますね」
性格が合わないなどがあり、顔を合わせれば殺しにかかる勢いの者もいる。
「私たちが会ったのがたまたまなだけってことか」
「【遊月】以外とは会ったことがないんですよね」
「そうだな」
「……あ、決着ついた」
二人の方を見ると、何故かは不明だが影夜がぐったりとしていた。
「勝ち」
「………何した?」
「普通に」
絶対に普通ではないだろうということだけは分かったが、何をしたか詳細は聞かないことにした。
「じゃあ、無愛だけで行くんだ」
「あっちの、要望も、答えないとだから」
それが罠である可能性も視野には入れるべきだが、軍内部で【月】と、それも【死月の災厄】と恐れられた無愛と戦おうとは思わないだろう。
そう結論を出し、無愛は遙翔との二人で会うことになった。
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「断られると思っていたから嬉しいよ」
笑顔で無愛を迎えた遙翔。遙翔が指定したのは、医療施設にある温室庭園だった。
薬の材料となるのであろう植物が無数にあり、中には昆虫がいる区画もある。
「虫は苦手か?」
「いや、別に…」
温室というモノが存在しているのは知っていたが、実際に見るのは始めてなため新鮮なのだろう。
「珍しいか?」
「……昔は、こういうの、なかったから」
「【月】は人間社会に混ざらなかったからな。百年前から進化し続けてはいるが、これは前からある」
「そう、なんだ」
【月】は閉鎖的だった。自分たちとその他で分け、関わることをしなかった。
「まぁ座れ。茶もあるぞ」
真ん中に用意されているテーブルと二つのイス。
無愛を座らせ、手慣れたように遙翔は茶を準備する。
「……手慣れてる」
「自分で入れる方が速いからな」
両者席に着いたことにより、会合が始まった。




