31.
あれから二時間弱使い、なんとか森から抜け出し軍へと戻った無愛たち。詠斗への報告は影夜と青海で行った。
「【月】の勧誘は失敗か」
「あいつらも百年経てば持ちようが変わる。昔のように肩身が狭いワケじゃなく生きる術を持ってる」
【月】をこちらに引き入れるのは難しいだろうと話す影夜に、詠斗は難しい顔をした。
影夜の推測で物事を進めるのなら、【月】の一人と敵対するのはほぼ確実。【月】のトップであった無愛と影夜と言えど、現在は学生と変わりない。慧斗も、殺傷能力はかなりのものだが、それが生存となれば、どこまでやれるか。
「他に当ては」
「ない。【遊月】は音沙汰ねぇし、他はどこにいるのか分からん」
「【永月】とやらは?」
「それこそ無理。あいつの能力は文字通り【永遠】。なんでもありのチートだ。俺の能力じゃが立たない」
「【崩壊】や【剥奪】は」
「どっちも条件が合わないと無理だ」
攻防どちらにも長けている【永月】を相手するのはかなり難しいだろう。
「ならどうする。お前の見立てではこのままでは勝てないのだろう」
「状況次第としか言えないな。あくまで捕まえるのが目的なんだろうが、【月】はどいつも殺傷能力が高いか攻撃力がないかで、殺さずなんて信条はない」
【月】たちからすれば、殺るのを躊躇えば殺されるのだから、必然的に能力の使い方もそちらに向かうのは当たり前のこと。
「【月】の中で友好的なのはいないの?」
「いたら【月】なんてやってないだろ。自分たちを迫害してきた奴らと仲良くなんてするはずない」
「あんたらが特殊なだけか…」
「別に俺は人間だのメノウだのどうでもいいからな」
影夜は無愛以外のことならば寛容であり、無愛は興味を抱くことがあまりない。慧斗は無愛至上主義なため、無愛が言えばそれが絶対。
「つか、バランスが悪いんだよ。青海のだって、別に強いワケじゃねぇし」
「今バカにした?」
「応用が上手いって言ったんだよ」
この部隊の前衛は応用が効く青海と【三態】の能力を持ち広範囲を攻撃できる雫のみ。他は後方支援などが主であり、前線に出るような能力ではない。
「わざわざそんな部隊編成をする理由は?」
「その方が動きやすいだろう」
「だとしても、攻撃メインをもっと入れるべきだろ」
今までやれてきたのを見れば問題はないが、違和感はある。
「言うつもりはないならいいが、俺らは主力にならねぇぞ」
「貴様らは勝手にやるだろう」
「人とはお前らが争え。俺たちはあくまで【月】とメノウとだけやる」
【月】であれば同じ【月】として。
メノウであれば造られたメノウとして。
「軍にいる裏切り者はお前らが処分しろよ」




