25.
新年明けましておめでとうございます。
「薄気味悪い森だな……」
「そう言うな。住み心地はいいんだ」
霧がかかっている森に到着した無愛たちは奥へ奥へと進むが、
「………ループ」
「してますね」
一向に目的の場所には着かない。
「そんな能力だったか?」
「……【永月】」
「可能性はありますね」
「となると、こっからは無愛一人か」
「説得?」
「いや、聞いて無理だったら帰ってこい」
足を止めて、無愛だけが歩いて行く。
「消えた!?」
少し歩いただけで無愛の姿は見えなくなってしまった。
「【永月】は能力だけか」
「森全体にですかね」
「その、【永月】ってのは?」
「【月】の一人で、敵に回したくない奴上位」
【永月】。名前は一部の【月】にしか教えられておらず、能力も同様。【月】の中でも謎に包まれた人物である。
「ちょうどいい。無愛がいないから、この前の続きといこうか」
この前、と言っても、もう二ヶ月も前の話である。
「長官があんたと無愛を『生き物と呼ばない』って言ってたことよね?」
「そう。で、その理由は単純だ」
影夜は、なんてことはないと、
「俺と無愛は『人間』じゃないからな」
「……」
驚く者、冗談だと受け取る者、知っていた者。
最初に口を開いたのは、音葉だった。
「えっと、じゃあ二人はなんなの?」
「メノウ」
「!! そんなはず、だって、あんたたちには知性があるじゃない!」
信じたくないだろう。
二ヶ月弱共に過ごしていた相手が、人類の敵であるメノウだとは。
「残念ながら事実だ。俺と無愛は前に潰したメノウ研究所。あそこで造られた人工メノウ」
「っ、じゃあ、呼ばれてた番号ってのは」
「製造順でもある」
影夜は「08」、無愛は「00」。
「それだと、無愛の方が先にならないか?」
「他にももう一つ意味があるんだよ」
「意味?」
「そ。製造順と」
影夜の言葉は、ここにいる者たちを驚愕させた。
「メノウの細胞の割合だ」
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一方、一人で歩き進めていた無愛は、とある廃墟の前まで来ていた。
「……懐かしい」
「そうでしょう?」
声がした方を見れば、そこには男がいた。
「………久しぶり、だね」
「えぇ。お久しぶりです。【死月】」
「今は、無愛、だよ」
懐かしい顔に、無愛は少し表情が緩んだ。
「そうでしたか。それは失礼を」
「いいよ。今は、私と、【腐月】だけ、だから」
「今は【死月】ではないのでしょう? 私のことも、白夜とお呼びください」
柔らかな物腰の白夜だが、無愛を少しだけ警戒していた。そして、それは無愛も同じだった。
「まだ、ここに、囚われてるの?」
「未だにご自身のことを知らずにいるのですか?」
二人は似た者同士だと、とある【月】が言っていた。
片方は「生命」に拒まれ、「死」を招く。
片方は「能力」によって、周りから拒まれる。
どちらも、当たり前のように与えるはずのモノを得られなかった。
一方は造られた命。一方は周りを不幸にしてしまう力。
どちらも、ソレを与えられることはないと、いつの日からか諦めてしまった。




