24.
「てことで、詠斗からの指示で【月】集め」
「………いや、てことでじゃない」
「大事なとこすっぽり抜けてる」
端的に話を進める影夜は、よく話の必要なところが欠ける。全て話せば混乱するからという影夜なりの気遣いなのだが、こういうときは全て話すべきである。
「そもそも、居場所知ってるの?」
「知らないが、目星は付いてる」
「それで、目当ての【月】は?」
「まずは【腐月】を探す」
詠斗と話していた【信月】ではなく、別の【月】を探す。
「その【腐月】ってのは?」
「触れたモノを腐敗させる能力者」
「確かに、あいつ、味方は、強い。でも」
「難点が一つある」
****
郊外にある森の奥深く。
フードを被った一人の男が空を見上げていた。
「………彼女らがここに、か」
空を見上げ、撫でるように手を掲げていた男は手を降ろし、どこかへと向かって行く。
「我々が争うのはご法度。恩人のためにも、協力すべきなのでしょうね」
向かう先は古びた廃墟。もう何年も手入れされておらず、蔦や苔が生い茂っている。
「【死月】。不死の月。死ぬことのない、絶対唯一の月。あなたの考えは、未だに理解できない」
廃墟の一室に飾られている、古い写真。それは、四人の少年と一人の少女の写真だった。
「あなたがいなくなり、【月】は崩壊した」
この廃墟は、百年前、【月】が集った場所。
「始まりの場所であるここは、人の踏み入っていい場所ではない」
彼は百年もの間、ここの番をしていた。
いずれ帰ってくるだろうここの主たる【月】を信じて。己の能力で他者を傷つけぬために。
「来るのなら、あなたお一人で」
フードを隙間から見える男の顔には、左半分に大きな傷痕が残っていた。
「……おや」
男の肩に止まった一匹の小鳥。
外には何匹もの小鳥がおり、その中の一匹がここまでたどり着いたのだと分かる。
「悪いことは言いません。そこから降りることです」
人の言葉を鳥が分かるはずもなく、小鳥はピィピイと鳴きながら男の肩にいる。
「……そうですか。残念です」
突然、肩に止まった小鳥が苦しみ始め、
「生命の死。それこそがあの方のチカラ」
この男、【腐月】苦楽白夜の能力によって、腐敗し、死んだ。
外にいる小鳥たちは叫び始め、飛び立った。
「ちょうどいい。彼女にお伝えください。私はこの地から出るつもりは毛頭ありません、と」
彼女なら、【死月】であれば、小鳥たちの声を聞けるだろうと。
小鳥たちが【死月】を分かるとは思えない。だがそれは、別の形で、
「……ここが」
「【月】が始まった場所」
森へと来た、主と招かれざる客に伝えられることとなった。




