22.
「書類、もらいに来たけど」
「あぁ、ちょうど終わった」
部屋に入ってきたゆらに作った報告書を渡すと、ペラペラとめくり始め、
「……できてるね」
「そんな信用ないのかよ」
「信用とかじゃなくて、これはもう慣れてるか慣れてないかだから」
これは渡しておくと部屋から出ようとするゆらを影夜が止める。
「……なぁ」
「何?」
「なんでさっきからそんな殺気立ってる?」
影夜がそう言った瞬間、無愛はどこから取り出したのか、短剣をゆらにつき付けた。
「ちょっと!!」
「おい、何やって」
慌てる音葉と尊とは別に、冷静な四人。
「………少しイラついてたんだ。敵意はない」
「へぇ。少しね…」
「それが理由になると?」
「…………無愛、剣降ろせ。バレて面倒なのはこっちだ」
無愛はゆらを警戒したまま短剣をしまい、影夜の側まで歩く。
「まさか剣を向けられるとは……。どうやって収納してるの」
「さぁ?」
言うつもりはないとばかりに笑顔を向ける影夜。
「まぁ、いいや。これは隊長に渡しとくね」
何故か上機嫌になったゆらが退室し、それと入れ替わりで雫と紗愛が入ってくる。
「何かしたの?」
「殺気向けてきたからなんでか聞いただけだ」
「へぇ、珍しいわね。ゆらはこの中じゃ温厚なのに」
あれで温厚? と三人は思うが、基本交流するのが青海と笙人と詠斗と極少数。そういうものなのだなと納得してしまった。
「……」
「無愛、どうかしたか?」
「…………なんでも、ない」
ゆらに剣を向けたときに感じた違和感。無愛はそれを気のせいだと思うことにした。
相手は青海たちが信頼している人物だからこそ。
****
「あはっ、バレたかなぁ」
月明かりが照らす暗闇の中、一人が空を眺めそう呟いた。
「無用心だよねぇ。あれがあの【死月の災厄】だなんて」
その人物の目は、人とは言えないような目で、赤く不気味に光っていた。
「次の標的はどうしようかな」
人物が手の上で転がして遊んでいるモノ。本来ならば、存在するはずのない、存在してはならないモノ。
「『メノウを生み出す核』なんて面白いもの、使わないワケないよねえ」
日中に軍敷地内現れたメノウも、この人物の持つモノが原因だった。
「次はどんなので遊ぼうかな」
そう言い、夜闇に消えた人物。
その人物がメノウを生み出す危険なモノを所持しているなど誰も思わない。そして、
「……」
その人物もまた、自身が視られているとは、到底思うはずもなかった。




