2.
「とりあえず、座ってくれ」
「では。無愛、おいで」
「子どもじゃ、ないのに…」
影夜が先に座り、隣に無愛を座らせる。
近い。それはもう。そんな二人の距離感に客人は驚いているが、二人は特段気にしない。……というより、無愛が気付いていない。影夜は無愛が何も言わないのを良いことに好きにしている。
「それで、軍の方とお見受けしますが」
「話が早くて助かるよ。君たちの話は、軍まで届いている」
「もしよければ、軍に入って協力して欲しいの」
もちろん、二人の答えはノーだ。ただ、どう断るか。
「……有難い話ではありますが、すみません。自分たちには親がいませんし、妹の無愛は病弱であまり動けません。お恥ずかしながら、自分は仕事中でも妹が体調が悪いとなれば妹を優先する自信があります」
「私は、体調が、優れないと、まともに、動けないです。皆さんの、重荷になる、可能性が、高いです。なので」
こういうときに無愛の病弱という設定が役に立つ。
「それを承知の上でだ。それを加味した上でスカウトしに来ている」
(一番、だるいの、きたぁ……)
(調査済みってか…?)
「それで少々調べさせてもらったのだが、違和感だったのが君たちの親がいないことだ。里親などもいない。孤児院などにいた記録もない」
「あなたたちを出産したという記録もよ。意図的に消されたか、そもそもで存在しないか」
メンバーのトップであろう人物が、二人を窺う。他も、二人を警戒している様子だ。
「ないのは当たり前ですよ。自分たちは『森に捨てられていました』から」
「………森に?」
「郊外に、ある、絶対不可侵の、森は、私たちの、生まれ育った、場所です」
「……そんな報告は」
あげられていない。そう言おうとした人物が、何かを思い出したかのように言葉を止めた。
「十二年前の、双子の兄妹」
十二年前、とある双子の兄妹が不可侵の森から出てきて保護された。その双子は、メノウに襲われかけていたところを保護されたとされている。
「保護したあとに失踪した双子か。君らが?」
「失踪したことになってるんですか。一応紙に書いたんですけどね」
「都合の、悪いことを、揉み消すのは、変わらない、ですね」
無愛の一言で、場の空気が一気に悪くなる。
「どういうことだ?」
「そのまま、ですよ。私は、人が嫌い、です。私たちを、育ててくれた、人たちを、殺したから」
無愛と影夜は、森に捨てられていた。そこを、森に住んでいたメノウたちに拾ってもらい、育ててもらっていたのだ。
「私は、人が、嫌いです。だから、嫌です。メノウを、殺すのも、ですし、何より、親を殺した、あなたたちと、いたくない」
「俺らの考えは以上です。それでは」
そう言って立ち上がろうとするも、動けなかった。
「………拘束、それとも停止か?」
「よく、分かるね」
「観察は基本だ」
(はぁ、早くしないと無愛が怒るな)
「……」
「無愛、ダメだぞ」
「やらない、よ」
何をとは言わない。二人の間では、何をと言わずとも伝わるから。
「ただ、壊すだけなら、良いでしょ?」
「!?」
「………チッ。程々にしろよ」
「はぁい」
そう言って、かけられているモノを強制解除した。
「あっはは。何年ぶり、かなぁ。楽しもーよ!」
「っ、こいつ!」
「なぁ、ほら、ほら!! 殺ろうよ!」
無愛から発せられる異様な気配。軍の人たちも、影夜も知っている。あのモノの力と恐怖。
「【死月の災厄】か!?」
キャラ崩壊。
「書き手、主要キャラ、快楽主義に、しないと、書けないの?」
そっちの方が書きやすいんだよ。そして君の片言、とてもとてもやりにくい……。
「その設定付けたの書き手だから諦めろ」
「というか、展開、早い」
別シリーズでグダったので、こっちはサクサク進める予定。投稿感覚は二週間に一話という謎の間隔投稿です。今のところ木曜日の予定です。