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15.




なんとも言えないこの空気を壊したのは糸目の男だった。


「まさかそのためだけに私を残したのではないですよね?」

「そうだが、問題があるか?」

「意地の悪い人だ。私と彼の仲が悪いことなど分かっているでしょうに」


そう言うが、影夜と糸目の男は今日が初対面。仲が悪いも何もないはずだ。


「………久しぶりだな。死んでなくて残念だ」

「いやはや相も変わらずお強いことで。我らが姫君を救えなかったグズが生き返るとは贖罪ですかね? ならば是非とも死んで詫びていただきたい」


顔を見ようともしない影夜と、ニコニコと笑いながら毒を吐く糸目の男。


「知り合いなの?」

「確か、私たちの少しあとに入った、新谷よね?」

「はい。新谷(にいや)慧斗(けいと)。かつて、我らが姫君、【死月の災厄】に仕えた【月】が一人、【慧月(けいげつ)】です」


それを聞き、青海たちは詠斗を見やる。


知っていて入隊させたのか。危険ではないのか。


「ソレは使える。【死月】と【闇月】と同様にな」


影夜と無愛が【月】であることを知っている。何故なら、


「……あの、長官と天月はどういう関係で」

「メノウを撃退しているとこを目撃してな。【月】であることも【能力】で分かった。危険分子を放置するのも問題だから生活補助をする条件で人間への攻撃をしないということになっている」


それこそが、親のいない二人が今まで生きてこられ、生活できていた理由。

二人ならば闇バイトなどで簡単に稼げるものの、バレればまずい。その点、詠斗からの申し出はバレる可能性も低く、安全でもあった。


「あの子は?」

「寝てる。寝起きが悪いのは言ったろ。呼ぶなら自分で起こせ」

「やめておく。アレの能力はシャレにならない」


アレ、ソレと、詠斗は【月】をあくまで「武器」として見ているような言動に取れてしまう。それが少し、青海たちの気に触れた。


「いくら【月】が昔人へ被害を出していても、今はこちら側。モノのような言い方は」

「こいつはともかく、ソレとアレは『生き物』とは呼ばん」

「どういうことですか」

「話してないのか?」


詠斗は影夜を見るが、影夜は詠斗を見ようとしない。


「知っているのは」

「……お前と一部の【月】。この前笙人にも教えはした」

「それは信用したからか?」

「青海と笙人なら笙人の方が口が固い」

「ちょっと?」


言外に口が軽いと言われ、イラッとする。


「ちょうどいい。無愛には言うなよ」


そう言い、口を開こうとしたそのとき、


「会議室、ってここ、だよね」


タイミング悪く、無愛が入ってきてしまった。


「………あー、なんか、話の、途中、だった?」

「いや、ちょうど終わったところだ」

「ん、そっか」


特段怪しむ様子もなく、無愛は当たり前のように詠斗に挨拶せずに影夜の側に寄る。


「また追って連絡をする」

「ん、じゃね、詠斗」


そのまま出ていこうとする無愛は何かを思い出したかのように身体を翻す。


「慧斗も、じゃーね」


そう言って、やることはやったと言わんばかりに出ていった。


「アレが起きた。一度終わりだ」

「んじゃ、連絡は適当に寄越せよ。慧斗は来るならさっさと来い」

「言われなくても行きますよ」


出ていく影夜と、それを追う慧斗。


「………え、待って。問題児が増えたんだけど」

「元からだ。我慢しろ」

「アレを入れたんだ。それくらい許容しろ」




投稿ペース週一になります。


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