12.
「だが、それだと双子っていうのに説明が」
「それが嘘なんだよ」
双子というのは、あくまでも自分たちの身を守るための手段。
「ここでは、人型のメノウを造る実験をしていた」
最初はメノウに人間の一部を、次に人間にメノウの一部を。
「俺は約八割をメノウの細胞で造られた人型だ」
「……なら、あいつ。【死月】は」
「完全なメノウだよ。人型のな」
だとしても、だ。
「今世では人間だろ」
「…………いいや」
影夜と無愛には親がいない。強いて言うのならば、造り主と、自分たちの細胞の一部として使われたメノウと、この研究所の人間が親だろう。
「俺らが森にいたのは、そこで生まれたからだよ」
「………じゃあ、今のお前は」
「メノウだな」
そう言った瞬間、笙人は警戒態勢に入る。
影夜と無愛が【月】でも軍に入れたのは、前世がなんであれ、今の二人が人間と判断したため。それが違うとなれば、脅威となり得る。
「敵意はない」
「信用できるか」
影夜は笙人を見ず、奥へ進み、液体ポットに触れる。
「何するつもりだ」
「こいつらを救ける」
「させると思うのか」
「あぁ」
あまりにもはっきりとそう答えるものだから、笙人は目を見開いた。
かつて敵対関係にあった自分たちが、メノウを出すという行為をしようとしているのならば尚更、何故それをさせると思うのか理解できなかった。
「別に救けるからって出すつもりはない」
「………救けると言ってるくせにか」
「メノウにとっての救済ってのは、死なんだよ」
知能無く暴れるメノウにはたった一つ、とある意思が宿っている。もしかしたらそれは、意思ではないかもしれないが。
「生き物とかでもあるだろ。帰巣本能とか」
自分たちを造り出したモノの下へと帰ろうとする習性。その帰るべき場所がどこかは分からない。
「だからメノウたちは、言葉を操り、知能を持つモノに興味を持った」
意思が、本能が。
「帰るために必要なモノを得ようとする」
「それが人を襲うことだと?」
「人間には興味はない。あるのは言語能力と知識だ」
ただ、最も知識を持っており、言語能力を持っているのが人間というだけ。
「自分たちの帰り方を探してるだけだ」
影夜の言っていることには矛盾がある。
人間に興味がないと言っているが、言語能力と知識。それに興味を持っている。それはつまり、それを持っている人間に興味を持つことと同義であるから。
「……お前も結構ガキなんだな」
「は?」
「人間の持つモノに興味あんなら、それを持ってる人間にも興味あるってことだろ」
笙人がそう言うと、しばらく考え始める。
「…………人間の思考はやっぱり難しいな。紛れ込むならもう少し勉強するか」
「思考と言うより、普通に分かるだろ」
このとき、笙人は初めて、影夜が一人の幼い少年に見えた。
「……私、出てない」
次回たぶん焦点当たるのは無愛だから許して…。




