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何かの間違いです(希望)

 この国で信仰されている神々への朝の礼拝時間がやって来た。

 礼拝と云っても略式的だから20分程の時間しかとられていない。

 毎朝これを行ってからその日の授業が始まる訳だ。



(髪が長くなったくらいでそう簡単に神力を授けられたら聖女ばかりよね……)



 私はマリーナの言葉を思い出してすぐにそう思った。

 人格的に聖女から程遠いと知っているから自分に関しては変に期待する事もない。


 そうはいっても実は聖女候補の人数は決して少なくない。

 神力と呼ばれる光属性魔法を得る者は一万人に一人くらいはいるらしい。

 聖女よりどうやって統計をとったのかの方が気になるけど。

 とにかく、国の人口から見るとそこそこの割合で存在するのは間違いない。

 

 こんな話も聞いた事がある。

 聖女に相応しい力の持ち主は貴族ではなくほぼ平民から出てくるという話だ。

 支配階級からではなく平民から出ると言った所が民衆受けする要素の一つでもあるのだろう。

 半分平民の私としてはものすごく不気味な噂だ。


 とにもかくにも私はいつも通り気楽に神にお祈りした。

 すると今日に限って恐らく雷と云っていいような衝撃が体に走った。

 頭が真っ白になって意識が飛ぶ。



 どん!


「!!!」



  


 私が学園の居寮室のベッドで目を覚ましたのはお昼の時間だった。

 目を覚ました私に気が付いた医療教員が慌ててだれかを呼びに行く。

 その間私はなぜ自分がここに居るのかを思い返す。

 のろのろ上半身を起こすと間を置かず複数の足音が聞こえて来た。

 学園長・学年主任・知らないおば様とお姉様の4人だ。

 キツめ美人のお姉様を除いて皆一様に笑顔である。


 何故か知らないが嫌な予感が胸に渦巻いた。

 学園長が私に口を開く。

 


「ロザリア嬢、おめでとう!」


「へっ?」


「あなたは聖なる力を授かりました」


「ん?」



 言葉はわかるがその意味を瞬時に理解するのは無理だった。

 ぼんやりした頭でどうにか言葉の意味を理解する。



 (礼拝で力を授かるとかそう云うのは聞いた事あるけどまさか自分が!?)



 驚く私に今度は学園主任が口を開く。



「おめでとう!! いやぁ、久々の聖女候補だよ。凄い衝撃音だった。

 職員室にまで聞こえた程だ!」


 (あの音って他にも聞こえたんだ……)



 聖なる力っていうよりほとんど落雷だったような気がする。

 いい事というより災厄のような気分なんだけど。



「シモンズ伯爵家には使いを出している。君が聖女候補になったとね!

 これはすごい事だよ、君!」


「? 何がでしょうか」


「何って……君も知っているだろう? 君は伯爵令嬢だ。

 貴族の聖女は王家の一族に連なる資格を持つ事になるじゃないか!」


「は?」



 そうだっけ。そう云えばそんな話聞いた事がある様な……。

 ぼんやりした頭がいきなり全力で回転を始め一瞬遅れて私の心臓が飛び跳ねた。



(いや、待って、ちょっと待って!)


 

 口を開けたまま固まる私に今度はお姉さまが口を開いた。



「そういう訳であなたは王立聖教会学院に編入する事になります」


「え!?(結論が早すぎる!)」



 恐るべき三段論法に頭が真っ白になる。

 優しそうなお婆様が呆然とする私の手を取って微笑んだ。



「私は学院長のプルムと云います。これから宜しくね」


「は、はぁ……」



 聖女? 私が? 王家入りの可能性? いきなり転校って……強制?

 恐る恐る聞いてみる。



「あの」


「?」


「必ずそうしなければいけないのでしょうか」



 プルム学院長は呆れた表情でとどめを刺した。



「当たり前でしょう。決定事項です」


「嘘……」


「嘘じゃありません」



 嘘だ。嘘だと誰か言ってほしい。

 確か聖女は厳しい修行に堪え人々の為に無償で尽くす存在のはずだ。

 本当に立派だ。心から尊敬する。だが自分自身がそんな存在になるとは全く思えない。

 


(何でよりにもよって私に?)


 

 ハッキリ言おう。厳しい修行に耐えるつもりも自信もない。

 何処見て選んだんですか、神様。その目は節穴ですか。



「間違いですよ、何かの。きっと」



 力強く断言する。そして強く神に祈る。

 人選を間違ってますよ。もう一度選定をやり直して下さい、と。

 しかし無論何も起きなかったし全員全く納得していなかった。



「教室にいる全員、あなたが光に包まれたのを見ているのですよ」


「そんな事は……。だって私、光魔法使えないですし」



 するとお姉様が私に向かって手を出した。

 どうやら聖女学園のシスターらしい。



「手を出しなさい。魔力循環して外部刺激を与えるから」



 恐る恐る私はその手を握った。すると私の手が光った。

 いや、手だけじゃない私の体全体が信じがたい事だが光ってしまった。

 まるで光の塊だ。眩しすぎる、自分が。



「っ!!!」


「「おおおおおっ!」」



 おじ様二人が顔を顰めつつ声をそろえて感嘆する。



「間違いないわ。光属性魔力よ。それもかなりの規模の」



 そう云って満足そうな顔でプルム学院長が微笑んだ。

 私は手を顔に乗せて天を仰いだ。

 眩しいからじゃない。

 ものすごく複雑な気持ちが表れているだろう表情を見られない様にだった。

なろうの編集画面って時間制限あるみたいにエラーになるのどうにかならないんでしょうかね……。


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