Web広告の仕組みと制限
ただの一個人が言っている事です。
全部が全部本当だと思ってはいけませんw
明らかに間違っている部分がありましたら、教えてやってください。
さて、では次にWeb広告がどういうものか、について考えてみる事にします。
なろうを含めて、多くのWebサイトが広告により収益を得ています。これらのサイトは、広告の配信会社を利用しています。個別にスポンサーから広告を取ってくる、というのは現実的には無理ですから、それは当然の選択と考えられます。
この関係を理解するのに、一番良いモデルはTVの民放と言えます。なろうはTV局で、広告配信会社が電通などの広告代理店、広告を出稿するスポンサー企業があり、そして視聴者に相当する作者・読者があると言う訳です(ここで作者が番組制作会社でなく視聴者扱いなのが、なろうの大きな問題なのですが)。なろうの直接の客は決して作者・読者ではなく、広告配信会社であるということは理解しておかないといけません。そして、力関係としては当然
なろう<広告配信会社<広告出稿企業
となると理解できます。
このあたりが、例えばカクヨムとの大きな違いです。なろうは広告に収入を依存していると理解していますが、カクヨムはホーンリバー帝国の広告塔のようなもので、本を出版する際の作者のスカウティングにも使用されるでしょうし、読者には多くの本の購入者、すなわち直接のカスタマーがいると考えられます。あえて言うならネトフリとか、そういう形に近いでしょうか。ですので、こちらは広告に依存しなくて済み、運営側の自由度が高いのは当たり前の話と言えます。
気を付けておかなければいけないのは、広告配信会社というのは沢山ある、ということです。ですから、その「しくみ」や配信内容まで、全部ひとまとめで語る事は必ずしもできない、ということになります。
そして、なろうは複数の配信会社を使用しているという事ですので(リスクヘッジのためには当然)、なろうに出来ることはそれら複数の配信会社の「最大公約数」の部分しかない、ということになります。ある配信会社に特定の有効な機能があったとしても、他の配信会社にそういう機能が無ければ、ページとして、あるいはサイトとして統一的にその機能を使用することができないからです。
さて、Web広告を導入したい場合、配信会社に申し込みをするわけですが、その際には審査があるようです。審査の内容とか基準とかは会社によって違うのでしょうが、そこでサイトの内容も判断されると考えられるでしょう。PVを考えれば、なろうがRejectされる事は考えられないでしょうが、例えばサイトが「健全」であるかどうかというのは、広告を出稿するスポンサーにとっての判断材料となりえます。AVのDVDをレビューしているようなアダルト系サイトにAMEXが広告を出したがるとは思えませんよね。
つまり、なろうが性的表現を比較的厳しく制限しているのは、これら広告配信会社あるいはスポンサーへの「ウケ」を狙っていると考えれば、間口を広げる意味での当然の行動と言えるのではと思います。そして、そういった配慮がそこまで必要ないカクヨムとかでは、よりゆるい表現規制となりえるのも理解できると思います。
同時に多少のエッチい広告を受け入れるというのも、スポンサーの間口を広げる意味では正しい行動と言えます。R18広告が出てたら別でしょうが、配信会社は自らが配信する内容も判っているでしょうから、表示される広告がサイトの評価にはつながらないでしょう。
よって、比較的よく見かける「作品では性描写を制限しているのに、エッチな(あえてアダルトなとは言わない)広告を表示するのはおかしい」という意見に関しては、多様なスポンサーの意見を最大限尊重するとそうなるのも当然、という答えになります。
無事審査が通ったら、IDを含むスクリプトが発行され、それをWEBページに埋め込むことにより、広告が表示されるようになります。ちなみに、広告は画面上のサイズによって単価が違ったりもするようです。より大きく表示されるものがより収益的に有利なんですね。その意味では、スマホの小さな画面よりはPCの大きな画面の方が有利ではありそうです。
そして大事なのは、表示される広告は、すべて配信会社が独自のアルゴリズムによって選択したものとなるので、なろう運営の関与する余地は非常に限られる、という事です。
例えば、前にWeb記事で紹介された配信会社の設定においては
・設定は、サイト単位でのみ可能。このため、ページごとやユーザー(の年齢とか)ごとに異なる広告配信設定は行えない。
・広告には複数のジャンルがあり、特定のジャンルの配信を拒否することはできる。たとえば、家具屋のHPにおいて、他の店の家具の広告を表示させないことはできる。ただし、ジャンル単位に限定されて、特定の会社の広告を表示させないというようなことはできない。
・R18広告を表示させない、という設定は可能である。ただし、その設定をした場合でも、結局R18広告かどうかの判断は配信会社によるものとなる(おそらくですが、具体的には出稿元の自己申告にほとんど依存すると考えられる)
というように、非常に限られた設定(あるいは制限)しかできないのです。
よって、例えばR15の広告のみ表示させる、という案は、配信会社がそのようなオプションを用意していなければ(広告単価が下がるというような話を置いておいても)実現不可能ですし、かつ一部の配信会社が対応していたとしても、全てが対応していない限り意味が無いと言えます。
広告のそばに、ユーザーからのフィードバックボタンを置いて、適切でない広告をなろうにレポートし、ブロックすれば…… という意見を目にしたこともありますが、そもそも特定の広告を排除する、という機能は用意されていないでしょうし、なによりなろう側には「どの広告が表示されているかを明確に把握する」ことはできないでしょう。コンテンツに埋め込まれたタグにより、配信会社の用意したJavascriptのプログラムが、なろうのコンテンツとは独立した形で広告を読み込んで表示するようページを改変する形になっているからです。
そして、最初に書いた力関係のとおり、立場的にはなろう側は強くないだろう、ということが推察されます。例えば、最大手であるGoogleのAdSenseは、クリック報酬型の広告という事ですが、不正にクリックが検出された(ページ表示に対して多くの回数クリックが検出されたなど)というような場合、一方的に配信と支払を停止するそうです。
もちろん、自ら不正を行っていたらそういう措置をされるのは当然なのですが、嫌がらせのために全く関係ない第三者がそのような妨害行為を行う事があるそうです。そうなってしまったら、自らログやその他の証拠を集めて、Googleに交渉して措置を解いてもらう、という必要があるそうです。
そのような広告配信側の一方的な措置が可能である、という点を見ても、はたして広告配信を依頼している側がどれだけ配信会社に物申す事が出来るか、という点には疑問があります。
ですので、もし非R18の設定をしている(であろう)サイトにR18的な広告が表示されていたとしても、配信を受ける側ができることはほとんどなく、もしユーザーが抗議するのであれば、配信会社または出稿元にするしかないのではないかと考える次第です。
私の認識する限り、今回はTOPTOONでしたが他のオンラインマンガの会社でも同様に全年齢・R18を混合配信する形で、R18的なコンテンツへのリンクを張っていたものを見た事があります。
また、主に同人のオンライン配信をするDLSiteでは、以前に成年マークを付けた完全にR18のマンガについてリンクを張っていたのを見た事があります。マンガサイトでは、リンク直後には年連確認は出ませんでしたが、この場合はクリック直後に年齢確認が出るような形でした。
R18のすりぬけをしてくるジャンルは、マンガサイトが主な気がします。マンガをジャンルとしてブロックする、という事はできないではない気がするのですが、なろう原作のコミカライズ、というのも重要なコンテンツで、この広告もブロックしてしまうと考えると、なかなか実施できるものではないと思います。
出稿元企業が、きちんと内容を管理してくれることを願うばかりです。
最後に、広告の選択方法についても、ちょっと触れておきましょう。ターゲッティング広告については長くなったので次回に回しますが、そのほかのアルゴリズムについてはオークションが有名です。出稿元が広告について、一回いくら、と単価を決めて、配信会社は単価の高いものを配信に回す、というものです。もちろん、単価だけだと同じ広告だけで画面が埋め尽くされるので、他の配慮もあるのでしょうけれど。
前にマンガ配信会社の広告戦略をテレビでやっていましたが、それは「波が来た」と思ったら即時に広告資金を突っ込んで、大量の広告を表示させるというものでした。このように、お金に糸目をつけないなら、自分の広告を表示させるという事は容易にできるようです。
ただ、広告資金も無尽蔵ではないでしょう。単価を決めると同時に、総広告資金、つまりは出稿回数も指定するわけです。この結果、一定時間が経ち予算が使い切られると、広告は見られなくなります。いやな広告が見られなくなった、と言っても、多くの場合誰かが何かをしたと言う訳ではなく、単に予算が尽きて表示されなくなった、というだけの話でしょう。
そしてまた「波が来て」予算が追加されたら、同様な広告が復活してくる、と言う訳です。
広告が消えた事に対して、多大な期待をしてはならないし、また逆に言えば黙って波が通り過ぎるのを待つ、というのも一つの賢い選択かもしれないのです。