表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/80

78 決心

「この観覧車何回目だっけ?」


 アンナは、一度、遠くに見える街明かりを眺めてから、サトルの目をまっすぐ見た。サトルの茶色の虹彩が、何にもたとえられないほど好きだった。


「えっと、4回目?」

「残念、5回目でした。秋の夜長とはよく言ったものね……17時過ぎで、もうこんなに暗い」

「秋の夜長なんて言葉、アンナには似合わないと思っていたけれど、何故か今、シックリきた」

「サトルくんって、時々、デリカシー無いよね。」

「あ、ごめん。アンナちゃん」

「そう、そうやって、ちゃん、を言って誤魔化そうとする。その後、髪をぐしゃぐしゃする。まあ、そんなことはいいんだけどね……話って?」


 サトルは二人の為という、素晴らしい気持ちを持って、まっすぐに言った。


「進路!!」


アンナは、心のベクトルを内側に向けるように、一度視線を落としてから


「私達はどうやら、違う進路になるようね……」

「そう!!ぼくは、アンナが好きだ!!大事に思ってる」

「うん……私だって、そう。サトルくんと付き合ってから、1日足りとも忘れたことは無かったわ」

「ぼくもそうだ!!だから……今後どうやって、大学に入った後も、付き合っていけるのか、ずっと考えていたんだけど……」

「んっ……」

「そうなんだよ……ぼくは芸術に対して、今以上に夢中で取り組むことになる……何度もやってくる分厚い壁も情熱によって、溶かして、進まないといけない」

「環境も変わるし……」

「それは、つまり……アンナを忘れてしまう日が来るかも知れないんだ」

「うん……サトルくんのことは、私だって、ちょっとは分かってるわ」

「ぼくはアンナを束縛したくないし、ぼくがぼくを束縛したくない」


 アンナは毅然(きぜん)に振る舞っていたが、気が付いたら、吐き出したほどの涙に溢れていた。観覧車から望む景色は、涙で滲んで、光の水溜まりのようになった。


「……分かった」


 アンナは投げ捨てるように言った。サトルのパーカーも涙でポタポタと濡れている。今日も多くの人々を乗せている観覧車は一周して、止まることなく、新たな周回に入っていった。二人は観覧車から降りた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ