71 バーチャル・リアリティー
「あ、これ○○○さん?」
「やっぱ知ってたんだ」
「うんうん」
「何?そのドヤ顔。知らない人、今時いないでしょ」
「へ、」
汗ばむ夜、二人きりの公園で、サトルとアンナはスマホをガチャガチャと扱っている。手先が、やけに器用。パルス。アンナがサトルの懐に潜り込んでから、目をパチクリさせて言った。
「これぐらいだったら踊れるよね」
サトルはアンナからの久々の光の攻撃に圧倒されて、頷くことしかできない。
「まあ、確かに……。」
「じゃあ、アップしちゃおっか」
「え、」
「二人のダンスをっ」
「それは、マズくない?アンナちゃん」
アンナはサトルの身体にオラウータンのようにしがみついた。
「どうして?私のこと嫌いなの?」
「いや、そんなことないよ。むしろ大好きだ」
サトルも少し頑張って、アンナにしがみついた。そうして、絡まり合った二人だった。しばらくの間、言葉は消えた。それからというもの、二人の間に燃えながら残ったものは、所謂、言葉の言葉だけであった。しばらくそれを静かに二人分かち合ってから。
「なんかエモくない?」
「それ、古い、死語死語」
「ドロンします」
「え、ドロン?死語もやっぱ、かわいいかも」
「おいら、かわいいでしょ?」
サトルはアンナに、キスをする勢いで、顔を接近させて訪ねた。
「うん、近すぎて、もの凄くブサイク」
「にゃあ~~」
「くさっ」
「わん」
「もっとくさい。またニンニク食べてきたでしょ?」
「わんわん」
***
「演技」
ぼくは嘘がつけません
その境遇で産まれておりません。
ぼくにその役柄は似合いません。
ましてやあなたの代わりなんていないのです。
ぼくはぼく
あなたはあなた
だからといって、落ち込まないで下さい!
ぼくにその役柄をやらせて下さい!
精一杯成り切りますので。
他の人格に成るのも、実は、好きなんです。
道化だなんて、最高です。
知らない自分で、ぷかんぷかん。
そんなことよりも、この物語が大好きなのです。
台本を読んだときに
感動し、胸の奥から爪先まで震えました。
だからこそ、こんなにも
怖くて怖くて仕方がありませんでした。
ぼくになんて
その役柄は出来ないのですと、、
やっぱり辞めたくなっちゃうのは
何故ですか?
それでも、今日のぼくは違います
成ります
成れるのです




