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70 ルミナス

 20××年8月15日

 菅谷杏奈


 明るいこと。これは簡単で単純なことのようで、とても難しいこと。明るい……、当然だけれども、明るさや正義や聡明を語りながら、戦争をしていたら、それは明るさではないわ。今私が思い浮かぶ明るさとは、自然。自然に答えやヒントがあるように思うの。たとえば、ユリはしおらしく、チャーミングでありながら、エレガンスに咲く。しかも、ユリの花言葉を調べてみたら「純粋」「無垢」「威厳」「純潔」また、「ソロモンの栄華もユリに()かず」という聖句もあるようで……え、聖母マリアの象徴?


 まだまだまだまだよく分からないけれど、人間が作る物質や文明的な明るさより、自然や心や内面世界を(もとい)にする明るさの方が、今の私は、信頼できるみたい。まあ、サトルくんレヴェルの明るさは、時々ついていけないときもあるけれど、サトルくんの明るさも、彼女とか、そういうのは通り越して、信じてみる価値というか、惹かれる何かがあるのは確か。まあ、現に、良くも悪くも私に影響を与えてくれているからね。


 明るさ。太陽や月の明るさも、無理はしてないわよね。誰に言われるでもなく、自ずと輝いてる。サトルくんが子供の素晴らしさをよく語ってくれるけれども、子供もそこに居るだけで、周囲にしあわせや安寧?を運んでくれる……うん、明るいわ。サトルくんみたいになっちゃうけれど、天国の存在が暗い感じはしないし、もしも、この世界にある、本当の明るさを見つけられたのなら、それは、何よりも、大切なことかも知れない。私は、いつか心の底の底から、明るく生きられるようになりたいわ。恩返しや恩贈り、という言葉があるみたいだけれど、自分が明るくなれたのなら、それが少しでも、実現できるんじゃないかな?これが、今の精一杯の私なりの答えよ。


 それでは、この祈りに似た想いを、あのお月様に今夜は託すわ。ギリシャ神話では、月の女神は、セレネ様やアルテミス様のようね。セレネ様の兄はヘリオス様(セレネ様はどうしようもなく恋い焦がれた方がいらっしゃったようね)、アルテミス様の双子の兄はアポロン様、いずれもご兄弟は太陽神様だわ。何故か、ごく自然に納得しちゃう。これは、私に限らず、誰しも、納得できる共通項だと思うの。何故か、納得できる感性を持っている人間って、不思議ね。やっぱり、人間の出所は1つなのかしら。明日も、必ず見守り、導いて下さいね、お月様、お月様。


***


「月の舞」


1

月があり

はじめて美と憧れが

月があり

二藍色(ふたあいいろ)の中で息が

月があり

墨汁

月があり

鍾馗蘭(しょうきらん)と髪の毛糸

月があり

道半ば

月があり

一が

月があり

(ともしび)



2

半月を霞めることしかできず

心はいつまでも湖岸にあり

影も虚しく

逢うことは未だ赦されておらず

人の浮き世をさまよってばかり

太陽は

我に能わず

太陽は

我には能わず

漆黒の紫陽花がよく似合う

(しとね)からは起き上がれず

望みもない

ただ魘夢(えんむ)の鏡のなかで

哀れな息を数えるのみ

それから

有り余るほどの

星々の明滅を少しの情緒さえ

浮かばないまま

褥の皺しわを増やすばかり



3

土を踏む、土に染まる

白詰草(しろめつくさ)は風を呼ぶ

風は曲線を描き

やがて小さな影に憩う

木々の梢で星辰は光る

東方からは宴の声が聴こえてくる

心余り、辺りにかまうこと赦されず

ただ立ち尽くす



4

その光は

愛の子らの夜の眠りを

夜の夢の庇護者を呼ぶ

その光は

太陽の心を休ませて

星々や安らかな虫の音に

静かな草々の露にいざなう

それらは四方に耀いて

それらは四方に耀いて

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