56 寿命
「どうする?医者から余命半年です、って、当然宣告されたら」
トモヤは、ぼりぼりと頭を掻きながら言った。今ちょうど、社会の授業が終わったところである。
「どうしたんだよトモヤ!?えぇっと……余命半年かぁ……う~ん、とにかく、好きなことを思いっきりやる!!」
「具体的に?」
「えぇっと……絵を描くでしょ、詩を書くでしょ、できれば本も出版して、CDも制作するでしょ……とにかく、ぼくにしかできない、オリジナルなことをやるんだ」
「うんうん」
「それと、、アンナといっぱいデートする!日本や世界で、行きたい色んなところへ行くんだ!」
「いいよなぁ~、サトルには彼女が居て」
「何を言ってるんだよ!?トモヤだって居るだろ?」
「別れた」
サトルは思いもよらぬことを聞いてしまったっと、後悔しながら、一度、下を向いた。
「ごめん、トモヤ。変なこと言っちゃったね」
「いいよ、いいよ。気にしてないから。いや~~、サトルは、いいよな。やりたいことが沢山あってさ」
トモヤは教室の窓の外をただ一点だけ、何かを焦がすかのような勢いで、じっと見つめた。その様子を見て、サトルは真心を込めて言った。
「トモヤ、トモヤは必ず見つかるよ」
「そう…だと、いいけど……ありがとう。なんかスッキリした」
トモヤは一度、サトルに微笑んでから、席から立ち上がり、教室を出た。サトルには、トモヤの後ろ姿が、少し、泣いているように見えて、心の臓器のようなものが痛くなった。この痛みは、きっと、トモヤの痛みだとサトルは気付き、自分の脳天気さを嘆いた。
***
「寿命」
いつかこの地球にも
寿命が訪れる
薔薇のように
ハクセキレイのように
人間のように
ダンゴムシのように
いつかあの太陽にも
寿命が訪れる
アゲハチョウのように
オラウータンのように
何億光年離れた星のように
どこかの会社のように
愛するあの人のように
いつかこの宇宙にも
寿命が訪れる
かげろうのように
戦争孤児のように
ノヴァーリスのように
ぼくのように
長瀬磨彦のように
いつかあの霊界にも
寿命が訪れる
いつか見た悲しい夢のように
いつか叶わなかった恋のように
ヒマラヤを飛ぶアネハヅルのように
顕微鏡で確認したミジンコのように
いつかは全てに
寿命が訪れる
寿命
それは
新たな世界への巣立ち
寿命
それは
ぼくたちの大切な何かを繋いで
ぼくたちの純潔を守るはたらき
そう…
ぼくたちのなかには…
ぼくたちのそとには…
永遠がある
永遠
永遠それは
ささいなことで
何度でも感動できる
子供のようなよろこび
永遠それは
涙
永遠それは
愛と光の螺旋
永遠それは
言葉にならない
言葉のなかの言葉
永遠それは
渇くことがない泉
永遠それは
今、この瞬間にも実感できるもの
また、昔にもあり
未来にもあるもの
永遠それは
純粋無垢な求心力
永遠それは
ぼくたちの故郷
ぼくたちは
永遠から産まれて
永遠に還る
永遠の子供達
ぼくたちは
気がついたら
永遠にいざなわれている
もしも永遠に寿命があるとしたならば
それはハッピーエンド




