44 元気
今日も太陽は誰にも気付かれないように、号令をかけた。それを知ってか知らずか、ショウヘイは、再た、冷やかすように、サトルとアンナを持ち上げた。ショウヘイがちょっとだけ特徴的に言うと・き、それは、かなりの範囲のクラスメイトが釘付けになると・きを意味している。春休みに入る前の小さな事件であった。
「で、その後は何をやったの?」
サトルはアンナの反応を観て、直ぐ様メンションした。それは、ショウヘイの邪な想いなどは、関係無かった。ただ身体がメンションした。
「その後は、ぼくのロマンを語ったんだ!」
「へぇ、それでそれで」
「分かりやすくいえば、本当の夢のこと」
「ほぉ、だからその後は何をやった?」
「え?お互いに、持ってきた飲料水を飲んで、喉を潤した」
「本当にそれだけ?」
「その後は、手を繋ぎ歩いて、最寄りの駅まで帰ったんだよ」
ショウヘイは今日はじめて、嬉しそうに、笑うのだった。それから、前髪をふいに、かきあげてから言った。時刻は、12時48分頃、いつもの教室。
「本当にそれだけ?」
アンナはショウヘイの白いYシャツを鷲掴みにして、教室の後部にあるロッカーに、ショウヘイを叩きつけた。
「サトルくんに、今後、一切、関わるんじゃねぇゾ」
ショウヘイは、尚更、愉しそうに、アンナにだけ聴こえるように、モゾモゾと言った。
アンナはショウヘイの態度をある程度理解してから、改めて、言葉を洩らした。
「サトルくんも本当に莫迦」
この教室は、ごく一部の人々だけ、そのイニシエーションに似た模様を、脳裏に焼きつけることになった。またクラスの少数派は、やれやれと愚痴をこぼした。これは、幸せといえば幸せだし、不幸といえば、何よりも、不幸な事件であった。
それから、これらの情勢や流れ、あるいは機敏と呼ばれる類いを知ってか知らずか、サトルは、言うのであった。
「アンナ!今日も一緒に、弁当食べよ」
「もう……、仕方ないなぁ」




