40 脱獄
「あ!あれ取りたい!」
「あのぬいぐるみかわいいよね」
「取って取って!」
サトルはUFOキャッチャーに100円をやや興奮気味で入れた。アンナは飛び跳ねるような目つきで、それを眺めている。目の前には、くまのぬいぐるみがある。
「よし、いくぞ!」
「サトルくん、頑張って!!」
サトルは、①ボタンを長押しして、まずまずのところに位置を定めることができた。鼻から取り入れる空気が多くなる。
「サトルくん、センスあるんじゃない」
「いやいや」
サトルは、続けて②ボタンを長押しして、絶妙な奥行のところで照準を定めた。ゲームセンターの雰囲気や発せられている音楽に誘われてか、二人はハイテンション。
「いけ、いけいけ!」
「あっ」
「わ!こっからよ、こっから」
UFOキャッチャーのアームは見事にぬいぐるみを掴んでいる。二人の目は、見事に、まんまるになっている。
「いけぇえええ!!」
「おおぉ!!」
「な!!!」
「うわぁあああ!!!」
「おっ……!」
「あぁああ!!あ~あ……今度は私が100円出すからさ」
「いいよ、ぼくが出すから」
「いや、私も出したいの」
くまのぬいぐるみは、思いのほか、落とし口に近くなった。まるで、この牢獄から早く脱獄したがっているようにも見える。
「次はイケるわ!!」
「アンナがやりなよ、自分のお金でしょ」
「サトルくん、デートしている女の子が取ってどうすんのよ」
「ふぁ、そうか、そういうことね」
「こういうのは男の子が取るものよ」
「男子たるものは!」
「そう、その意気!その意気!!」
「いくぞ!!」
***
『ぬいぐるみ』
いつでもきみと一緒にいるよ
きみが何兆光年の孤独を感じているときも
いつでもきみと一緒にいるよ
きみが楽しくて心がどうしようもないときも
いつでもきみと一緒にいるよ
きみがお金がなくて困っているときも
いつでもきみと一緒にいるよ
愛を知らなくて味噌汁を啜っているときも
いつでもきみと一緒にいるよ
ふわふわでほわほわでもふもふなときも
じゃれあって こすれあって
ぷ
けれどもきみと
一緒じゃないときがあるよ
けれどもきみと
一緒じゃないときがあるんだよ
それは
きみがたった1人で答えを見つけなきゃ
ならないとき
きみが青藍の涙を流しながら
それでもその気魄と
ロマンの焔を見つけるとき




